自転車事故と「慰謝料」

慰謝料とは精神的な損害に対する賠償金です。
自転車事故の慰謝料には、入通院慰謝料(傷害慰謝料)、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。

1 入通院慰謝料(傷害慰謝料)

入通院慰謝料とは、自転車事故で怪我をして、入院、通院したことによる慰謝料です。

自転車事故で怪我をすると、肉体的な苦痛を受けますし、入通院により行動が制限されるなど社会活動に制限を受けますので、そうした苦痛に対して認められるのが入通院慰謝料です。
入通院慰謝料は、入院した期間、通院した期間に応じて、以下の表の金額を基準に計算することになります(自転車事故による怪我が重傷の場合には別の表を使用します)。

ただし、むち打ちで他覚所見のない場合等、軽度の神経症状の場合には、表の金額の3分の2程度の額とされています。
また、以下の表は1月ごとの金額となっていますので、1月に満たない日数がある場合には日割計算をすることになります(1月は30日として計算します)。
なお、以下の表は入院後に通院することを前提としているのですが、怪我により入通院を繰り返した場合(入院し、退院し、また入院するといった場合です)には、「接木方式」、「合算方式」という方法で計算することになりますので、慰謝料がいくらになるかはご相談下さい。

《入・通院慰謝料表》

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
通院 53 101 146 186 220 250 266 277 286 295
1月 27 76 121 164 201 228 255 270 282 291 298
2月 49 99 141 181 209 236 259 274 286 294 301
3月 72 119 159 193 217 244 263 278 290 298 304
4月 90 134 165 199 224 249 267 282 294 301 306
5月 108 145 175 207 230 254 270 286 298 304 308
6月 120 153 183 213 236 259 275 290 300 306 311
7月 128 161 193 217 242 263 280 294 302 308 313
8月 136 169 198 224 248 267 284 298 305 311 316
9月 144 176 204 232 254 271 288 301 307 313 318
10月 152 182 210 236 260 274 292 304 310 316 320

(出典:大阪地裁における交通損害賠償の算定基準 第3版)

2 後遺障害慰謝料

⑴ 後遺障害慰謝料とは、自転車事故で怪我をして後遺障害が残った場合に、かかる後遺障害による苦痛、生活への影響等に対する賠償として認められる慰謝料です。
後遺障害慰謝料は、その後遺障害が相当する後遺障害等級に応じて、以下の金額を基準に算定されます。
なお、被害者に障害が残存し、それが後遺障害等級14級に相当しない場合であっても、残存する障害の内容、程度によっては慰謝料が認められることがあります。
自転車事故では、後遺障害等級を認定してくれる機関がないため、後遺障害診断書、画像、医師の意見書等から、どの等級に相当する障害が残存したといえるか、被害者側が検討し、主張、立証する必要があります。

(単位:万円)

等級 1級 2級 3級 4級 5級 6級 7級
慰謝料額 2,800 2,400 2,000 1,700 1,440 1,220 1,030
等級 8級 9級 10級 11級 12級 13級 14級
慰謝料額 830 670 530 400 280 180 110

⑵ 後遺障害逸失利益が認められない場合、将来の減収が明確でないため後遺障害逸失利益の算出が難しい場合などに、後遺障害慰謝料が増額されることがあります。
慰謝料は、被害者の具体的な事情を踏まえて、賠償額を調整する役割も果たすため、金額として算定が難しい損害がある場合には、その損害を慰謝料において考慮すべき(慰謝料を増額すべき)と主張することも考えられます。

⑶ 重度の後遺障害の場合には、近親者固有の慰謝料が認められています。
これは、被害者に認められる慰謝料ではなく、被害者の父母、配偶者、子に認められる慰謝料です。
近親者固有の慰謝料は、被害者に重度の後遺障害が残ってしまい、被害者の死亡と同じほどの精神的苦痛を受けたときには認められるとされています。
また、被害者の内妻、兄弟姉妹などにつきましても、具体的な事情から父母、子などと同視できる者については、近親者固有の慰謝料が認められるとされています。

3 死亡慰謝料

⑴ 死亡慰謝料とは、被害者が自転車事故により死亡した場合に認められる慰謝料です。

  死亡慰謝料は、以下の金額を基準として算定されます。

一家の支柱 2800万円
その他 2000万円~2500万円

  一家の支柱とは、被害者の世帯が主として被害者の収入によって支えられている場合をいい、遺族が経済的支柱を失うことを考慮して高額の慰謝料が認められています。
また、上記の金額は基準にすぎませんので、被害者の具体的な事情を考慮しながら慰謝料額を算定することになります。

⑵ 死亡慰謝料については近親者固有の慰謝料が認められています。
これは、被害者に認められる慰謝料ではなく、被害者の父母、配偶者、子に認められる慰謝料です。
被害者の内妻、兄弟姉妹などにつきましても、具体的な事情により父母、子などと同視できる者については、近親者固有の慰謝料が認められるとされています。

4 慰謝料の増額事由

慰謝料額は前記の基準により算定されますが、事情により慰謝料の増額が認められる場合があります。

⑴ 加害者の事情
加害者の過失が重く、事故態様が悪質であったり、加害者の事故後の行動が悪質、不適切である場合は、慰謝料の増額事由にあたるとされています。
自転車で危険な走行をしていたり、事故後に被害者を助けることなく立ち去った場合など、慰謝料の増額事由として主張していくことになります。
なお、加害者の裁判上の態度が不誠実である場合、慰謝料の増額事由にあたるかが問題となりますが、否定する見解が有力です。
裁判例には、加害者の主張が著しく不相当、不適切であることが証拠上明らかであり、「正当な権利主張を逸脱したもの」であるとして、加害者の裁判上の態度を慰謝料の増額事由としたものがありますが、例外的なケースと考えられます。

⑵ 被害者の事情
死亡慰謝料を算定するにあたり、一家の支柱については、遺族が経済的支柱を失うことを考慮して高額の慰謝料が認められています。
そのため、被害者が扶養していた者が多い場合には、かかる事情が慰謝料の増額事由として認められています。

5 保険会社が提示する慰謝料額

自転車事故においても、加害者が自転車保険、個人賠償保険等に加入しており、保険会社から賠償案を提示される場合があります。
保険会社は、保険会社の基準で慰謝料を算定しますが、これは裁判基準で算定した慰謝料額(これまで説明した慰謝料額のことです)よりも低額であることが一般的です。
弁護士は、保険会社に対し、裁判基準で算定した慰謝料額を支払うよう交渉していくことになります。
また、弁護士は、保険会社基準で算定された慰謝料額を、裁判基準で再計算するだけではなく、被害者の後遺障害が相当すると考えられる等級について検討するなどし、被害者が適正な賠償を受けられることを目指して、事件の処理に当たることになります。
こうしたことから、自転車事故の慰謝料については、まずは弁護士に相談することが重要といえます。

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