下り坂で2人乗りをした自転車が、交差点において単車に衝突した事故

大阪地裁平成28年5月31日判決(自保ジャーナル1981号)

事案

変形交差点において、二人乗りで下り坂を高速度で走行する自転車が、前方から走行してきた単車に衝突した、自転車と単車の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、類似の事案で参考にしてください。

  • 自転車対単車の事故
  • 自転車の二人乗り
  • 自転車の高速度走行
自転車と自動車・単車の裁判例

過失割合

単車20% 対 自転車80%

裁判所の判断

裁判所は、自転車の責任について以下のとおり判断しました。

「被告自転車を運転するに当たり2人乗りをしてはならず、また、本件交差点を右折する際には徐行するとともに本件交差点の状況に応じてできる限り安全な方法で進行しなければならない注意義務を負っているにもかかわらず、被告自転車の後部に友人を乗せ、南東方向からの下り坂を走行して勢いがついたまま本件交差点に進入し、本件交差点内を大きく膨らみながら北方向に道なりに右折しようとした過失が認められるのであって、民法709条に基づき不法行為責任を負う。」

裁判所は、過失割合について以下のとおり判断しました。

「被告は、運転操作が不安定となる2人乗りの状態で、相当な速度で下り坂を走行して本件交差点に進入しており、危険な方法で被告自転車を走行したというべきである。のみならず、本件交差点内を大きく膨らみながら北方向に道なりに右折しようとした点は、被告自転車の進行方向について他の車両運転者に誤解を与えかねない走行方法といえる。したがって、被告の過失の程度は相当大きい。これに比べると、原告の過失の程度は小さいが、原告としては、被告自転車が自らの方に進行してくることを具体的に認識した時点で被告自転車と距離があり、余裕がなかったとはいい難い
したがって、以上の諸事情を考慮し、本件では過失相殺率を2割として過失相殺するのが相当である。」
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解説

概要

自転車には二人乗りや大きく膨らみながらの右折などの過失があり、その過失は相当大きいとしました。

ただ、単車側にも自転車との距離があり回避の余裕がなかったとは言いがたいとして、20%の過失を認めたものです。

二人乗りについて

自転車の二人乗りは法律で禁止されています。

被告の二人乗りが事故発生の危険を高めたとして、二人乗りを過失として評価しています。

⇒自転車の二人乗りについては自転車の二人乗りは違法なの?で解説しています。

自転車の速度について

自転車の一般的な速度は時速約15㎞とされ、自転車が徐行する速度(直ちに停止できるような速度)は時速6~8㎞と考えれています。

被告が下り坂を相当な速度で走行したことを過失としています。

⇒自転車の速度については自転車事故で問題となる自転車の速度は?で解説しています。

  • 自転車が二人乗りで下り坂を高速度走行することは危険な走行である
  • 自転車が交差点を大きく膨らみながら右折することは、進行方向に誤解を与えるもので過失が大きい

類似の裁判例

裁判例①

二人乗りの自転車を追い抜こうとしたところ接触したという事故の裁判例です。

二人乗り自転車と追い抜き自転車が接触した事故

裁判例②

無灯火二人乗りの自転車と高速度走行の自転車が正面衝突した事故の裁判例です。

無灯火二人乗り自転車と、時速約20㎞で走行した自転車が正面衝突した事故

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、傷害慰謝料180万円、後遺傷害慰謝料280万円を含む719万3661円を損害として認め、過失相殺後の残額を575万4928円としました。