無灯火二人乗り自転車と、時速約20㎞で走行した自転車が正面衝突した事故

大阪地裁平成28年9月16日判決(自保ジャーナル1987号)

事案

車道上において、無灯火二人乗りの自転車と、時速約20㎞で走行する自転車が正面衝突した、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、類似の事故で参考にしてください。

  • 自転車の無灯火走行
  • 自転車の二人乗り
  • 自転車の高速度走行
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車40%対自転車60%

自転車40% 対 自転車60%

裁判所の判断

裁判所は、無灯火2人乗り自転車の過失について以下のとおり示しました。

「被告としては、本件事故当時、既にあたりは暗く、本件事故現場付近には街灯も存在しなかったのであるから、対向してくる足踏み式自転車との衝突を回避するために、前照灯を点灯して、自己の存在を知らしめた上、対向車両を発見した場合には回避可能なように、二人乗りなどすることなく被告車を運転すべきであったにもかかわらず、これを怠り、無灯火で二人乗りのまま進行し、原告車の前照灯の存在により原告車を確認することが可能であったにもかかわらず、本件事故直前に至るまで原告車に気づかず、回避措置も講じなかった過失がある」

裁判所は、時速約20㎞で走行した自転車の過失について以下のとおり示しました。

「原告としても、本件道路を対向進行してくる足踏み式自転車を発見した場合には、回避あるいは停止するなどして衝突を回避することができる程度の安全な速度で進行し、対向する足踏み式自転車を発見した場合には、停止する等して衝突を回避すべき義務があるところ、これを怠り、足踏み式自転車としては比較的高速である時速約20キロメートルで進行した過失があり、これにより原告は回避措置を講ずることもできないまま被告車と衝突し、左肩及び左側頭部等をアスファルトに強打するなどして同人の負った傷害も大きくなったものと認められる。」

裁判所は、過失割合について以下のとおり判断しました。

「足踏み式自転車においては、左側通行が徹底されているとはいえない現状であること、足踏み式自転車においては通常速度がそれほど速くないことから、自己の進路上に対向する足踏み式自転車が存在したとしても、停止や回避の措置により衝突を回避することは極めて容易であることなどを考慮すると、本件道路のような狭路で自転車が正面衝突した場合、過失割合は、基本的には五分五分と考えるべきである。その上で、以上のような被告と原告の過失の内容及びこれが結果に与えた影響を考慮すると、被告の過失の方がやや大きいというべきであり、4割の過失相殺をするのが相当である。」
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解説

概要

無灯火二人乗りの自転車と、高速度走行をした自転車が正面衝突した事故です。

無灯火二人乗りの自転車の過失は非常に重いように思えますが、一方で相手方も時速20㎞という高速度走行をしていたため、過失割合については40対60としています。

本件道路が狭路であったことなども考慮した判断となっています。

無灯火について

自転車も夜間にライトをつける法律上の義務があります。

夜間にライトをつけるのは発見されやすくするためであり、無灯火での走行は大変に危険なものです。

被告が無灯火で走行していたことを過失として評価しています。

⇒自転車の無灯火については自転車が夜間にライトをつけることは法律上の義務か?で解説しています。

二人乗りについて

自転車の二人乗りは法律で禁止されています。

自転車を二人乗りで走行することは難しく危険を回避することもできません。

被告が二人乗りしていることを過失として評価しています。

⇒自転車の二人乗りについては自転車の二人乗りは違法なの?で解説しています。

自転車の速度について

自転車の一般的な速度は時速約15㎞とされ、自転車が徐行する速度(直ちに停止できるような速度)は時速6~8㎞と考えれています。

原告が時速約20㎞で走行していたことを、比較的高速度の走行であるとして過失として評価しています。

⇒自転車の速度については自転車事故で問題となる自転車の速度は?で解説しています。

  • 自転車の正面衝突事故については、回避が容易であるから基本的には過失割合は五分五分となる
  • 一方は無灯火走行、もう一方は高速度走行の過失がありが、無灯火走行の過失をやや重いとみた

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裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、傷害慰謝料140万円、後遺障害慰謝料530万円を含む2253万5806円を損害として認め、過失相殺後の金額を1352万1483円としました。