赤信号で道路を横断した自転車と自動車の非接触事故

東京地裁平成28年9月28日判決(自保ジャーナル1988号)

事案

自転車が赤信号で道路を横断したところ、第2車線を走行していた自動車が、自転車との衝突を避けるため第1車線へ進入し、第1車線を走行していた自動車と衝突したという、自転車と自動車の非接触事故です。

自転車と自動車・単車の裁判例

過失割合

自動車30% 対 自転車70%

裁判所の判断

裁判所は、自転車の責任について以下のとおり判断しました。

「被告は、信号機により交通整理の行われている本件道路を横断するに際し、その対面信号機の灯火表示に従って進行又は停止すべき注意義務があるのに、これに反し、対面信号機が赤色表示であったのに本件道路を横断して、原告車の進路前方約29.9メートル付近を横切ったものであり、これにより、原告に原告車に急制動をかけさせて、同車をその走行する第2車線から左方の第1車線に進出させ、本件事故を惹起させたものといえるから、被告には過失があり、民法709条に基づき本件事故により原告らに生じた損害を賠償する責任がある。」

裁判所は、過失割合について以下のとおり判断しました。

「原告は、原告車を運転し道路を走行するに際し、後方から進行する車両の速度又は方向を急に変更させるおそれがある場合には進路変更してはならない注意義務があるところ、原告車のハンドルを左に切って、原告車の進路を第2車線から第1車線に変更したうえで同車を停止させ、本件事故を惹起させたから、原告には過失があるといわざるを得ない。
原告は、被告自転車との接触を回避するため、急制動をかけてハンドル操作をしたことには過失がないなどと主張するが、本件道路の速度規制、原告車及び被告自転車の各進行方向、原告X1が被告自転車を発見した際の同車と原告車との車間距離等を勘案すると、原告がハンドルを左に切って原告車を第1車線に進出させたことが、やむを得ない行為とは認め難いから、同原告に過失がないとはいえない。」
「原告と被告との関係では、本件事故の態様、原告と被告の過失の内容、程度等を総合考慮すると、その過失割合は原告3割、被告7割とするのが相当である。」
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解説

被告自転車が赤信号で道路を横断していますが、原告が接触を回避するために第1車線へ進行したことにも過失があるとされたものです。

速度や車間距離といった具体的な事情を踏まえた判断がなされています。

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