11歳の子どもの自転車加害事故で母親に民法714条1項の責任を認めた裁判例

神戸地裁平成25年7月4日判決(自保ジャーナル1902号)

事案

歩道と車道の区別のない道路歩行者に対し、11歳の子どもが乗る対向自転車が正面衝突したという、自転車と歩行者の交通事故です。

その他

裁判所の判断

加害自転車に乗っていたのが11歳の子どもであったため、母親につき監督義務を果たしていなかったとして714条1項の責任が認められるかが争点となったところ、裁判所は以下のとおり判断して責任を認めました。

「次郎は、本件事故当時11歳の小学生であったから、未だ責任能力がなかったといえ、本件事故により原告花子に生じた損害については、次郎の唯一の親権者で、次郎と同居してその監護に当たり、監督義務を負っていた被告が、民法714条1項により賠償責任を負うものといえる。

被告は、次郎に対し、日常的に自転車の走行方法について指導するなど監督義務を果たしていた旨主張するが、上記認定の次郎の加害行為及び注意義務違反の内容・程度、また、被告は、次郎に対してヘルメットの着用も指導していたとは言いながら(被告本人)、本件事故当時は次郎がこれを忘れて来ていることなどに照らすと、被告による指導や注意が奏功していなかったこと、すなわち、被告が次郎に対して自転車の運転に関する十分な指導や注意をしていたとはいえず、監督義務を果たしていなかったことは明らかであるといえ、被告の主張は採用できない。」

裁判所は、11歳の子どもについて責任能力がないとした上で、監護義務を負っていた母親がその義務を果たしていなかったことは明らかであるとして責任を認めたものです。

また、本件事故は歩行者と自転車の正面衝突であるところ、以下のとおり被害者について過失相殺を認めませんでした。

「本件事故は、次郎が、本件道路上を被告自転車で走行するに際し、自車の前方を注視して交通安全を図るべき自転車運転車としての基本的注意義務があるにもかかわらず、これを尽くさないまま、しかも相当程度勾配のある本件道路を速い速度で走行し、その結果、衝突直前に至るまで原告花子に気付かなかったことによって発生したものと認めるのが相当である(なお、本件道路の状況に照らせば、次郎が左側通行をせず、原告花子らが右側通行をしなかった点はいずれもやむを得なかったものといえる。)。

他方、原告花子においても、進路前方の安全に留意して歩行すべきであり、前方の確認がやや不十分であったものの、上記認定の原告花子らと次郎運転の被告自転車の大きな速度差、次郎の加害行為及び注意義務違反の内容・程度等に鑑みると、原告花子に過失相殺の対象としなければならない程の過失があったとは認め難いというべきである。」

正面衝突ではあるものの、自転車側の過失が重いとして歩行者側に過失相殺を認めなかったものです。

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解説

⇒自転車が歩行者に正面衝突した事故については自転車と歩行者の事故の過失割合で解説しています。

⇒自転車の左側通行については自転車は道路をどのように通行しなければならないのか?で解説しています。

⇒歩行者の右側通行については歩行者は道路をどのように通行しなければならないか?で解説しています。

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、傷害慰謝料300万円、後遺傷害慰謝料2800万円を含む9811万2951円を損害として認めました。