イヤホンをしながら自転車に乗ってもいいの?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

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イヤホン

イヤホンで音楽を聴きながら自転車に乗っている人を見かけることがありますが、このような運転は法律に違反していないのでしょうか。

また、自転車事故の被害者がイヤホンをしていたときに、損害賠償請求において被害者にも過失があるとされることはないのでしょうか。

イヤホンをしながら自転車に乗ることの法的な問題について解説していきます。

このページで解決するお悩み

  1. イヤホンをしながら自転車に乗ることが違法かわかる
  2. 自転車事故でイヤホンをしていたときの過失がわかる

イヤホンをしながら自転車に乗ることは違法?

イヤホンをしながら自転車に乗ることは違法なのでしょうか。

まず、道路交通法71条第6号は自転車運転者の義務として以下のとおり規定し、罰則として5万円以下の罰金と定めています。

第71条  車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。

(中略)

6 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項

引用元:e-Gov法令検索、道路交通法71条

そして、大阪府では、自転車運転者の義務として大阪府道路交通規則13条により以下のとおり定めています。

第13条 法第71条第6号の規定により車両等の運転者が遵守しなければならない事項は、次に掲げるとおりとする。

(中略)

(5) 警音器、緊急自動車のサイレン、警察官の指示等安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような音量で、カーオーディオ、ヘッドホンステレオ等を使用して音楽等を聴きながら車両を運転しないこと。

引用元:大阪府道路交通規則

このように、イヤホンで音楽を聴くことで、警察官の指示などを聞くことができないような状態で自転車に乗ることは違法とされています。

大阪府警察の説明を引用します。

次のような行為をしながらの運転は、注意が散漫になったり、安定を失うおそれがあるなど大変危険なので絶対にやめましょう!

道路交通法第71条第6号
大阪府道路交通規則第13条
罰則:5万円以下の罰金

(中略)
ヘッドホンステレオ等を使用して大音量(警音器、緊急自動車のサイレン、警察官の指示等安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような音量)で音楽等を聴きながら自転車を運転しないこと。
(注意)音量に関わらず、「安全運転の義務」に違反する可能性があります。

警察も、注意が散漫になったり、安定を失うおそれがあるなど危険が大きいとして、こうした運転をしないよう注意を呼びかけています。

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イヤホンをしていたことが過失になるのか

自転車の交通事故でイヤホンをしながら運転していたことが過失とされることはあるのでしょうか。

自転車事故の損害賠償請求では、被害者の損害がそのまま賠償金として認められるのではなく、被疑者にも過失があるときは過失割合に応じて減額されてしまいます。

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自転車同士の事故では、「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本 下巻 )というものを参考にし、過失割合について検討していくことになります。

自転車にはバックミラー等もなく音による情報が重要とされているため、イヤホン・ヘッドホンをつけながらの運転は、「著しい過失」にあたるものとして、基本過失割合から10%の修正を行うものとされています。

大阪府警察の説明にもあるとおり、大音量で音楽を聴いて道路交通法違反に問われるだけでなく、注意が散漫になることにより「安全運転の義務」に違反する可能性がありますので、このように過失が認められるものです。

イヤホンで音楽を聴いていたことが問題となった裁判例を紹介します。

大阪地裁平成31年3月22日判決

被害者は、加害者がイヤホンで音楽を聴きながら自転車を運転していたことが「重大な過失」にあたると主張しました。

裁判所は、「イヤホンを右耳のみに装着しており、両耳に装着していたわけではなく、原告が警音器の音を十分に鳴らしていれば原告自転車の存在を確認することができる状態にはあったといい得る」「イヤホンを装着して音楽を聴いていたことから直ちに、被告に重大な過失があったものとは評価し難い」と判断しました。

この裁判例では、イヤホンを片耳にしていたことから大きな過失と評価されませんでしたが、逆に考えると両耳にしていれば大きな過失として評価される可能性もあるといえます。

イヤホンをしながら自転車に乗ることは、違法とされるだけでなく、事故があったときに過失が重いとされてしまう危険もありますので、絶対に避けるようにしましょう。

自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

イヤホンをしていたことの立証方法

事故の相手方がイヤホンをしていたことを立証するにはどうしたらよいのでしょうか。

まずは刑事記録による立証を検討することになりますが、実況見分調書にイヤホンをしながら運転していたことが記載されることは考えにくいです。

加害者が、略式起訴されたり、未成年で少年事件として扱われたときには、供述調書を入手することができますので、そこにはイヤホンをしながら走行していたと記載されている可能性はあります。

なかなか確実性のある証拠を入手することは難しく、相手方がイヤホンをしながら運転していたことを否定していると立証は困難といえます。

まとめ

イヤホンで音楽を聴きながら自転車を運転することは、音量によっては道路交通法違反となる可能性があります。

また、イヤホンで音楽を聴いていたことが事故発生の危険を高めた場合には、自転車事故における過失が重いと評価される可能性もあります。

自転車事故の損害賠償では、具体的な事情を踏まえた主張を行っていく必要があります。

弁護士 髙橋裕也

執筆者

西宮原法律事務所
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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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