自転車の二人乗りは違法なの?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

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自転車の二人乗りは法律で禁止されており、二人乗りをした場合には罰則もあります。

二人乗りで自転車事故を起こしてしまったときの損賠賠償の責任について、自転車の交通事故の過失割合を裁判例を用いながら解説しています。

このページで解決するお悩み

  1. 自転車事故の二人乗りが違法であることがわかる
  2. 自転車二人乗りの事故の過失割合がわかる

自転車の二人乗りは法律で禁止されているのか

自転車の二人乗りの禁止

自転車を二人乗りすると警察官に注意されますが、そもそも自転車の二人乗りは法律で禁止されているのでしょうか?

道路交通法57条2項は自転車の乗員人数について以下のとおり規定しています。

第57条
2 公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限について定めることができる。

大阪府道路交通規則11条は、乗車人員について以下のとおり定めています。

第11条 法第57条第2項の規定による軽車両の乗車人員又は積載物(積載装置を備える自転車及び自転車により牽引されるリヤカーの積載物に限る。以下この条において同じ。)の重量、大きさ若しくは積載の方法の制限は、次の各号に掲げるとおりとする。

(1) 2輪の自転車の乗車人員は1人を、3輪以上の自転車の乗車人員はその乗車装置(幼児用座席を除く。)に応じた人員を超えないこと。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

引用元:大阪府道路交通規則

このように、「2輪の自転車の乗員人員は1人」とあることから、自転車の二人乗りは道路交通法、大阪府道路交通規則で定められた定員を超えていることになり、法律により禁止されているのです。

なお、大阪府以外でも同様の規則がありますので、大阪以外であれば二人乗りが許されるというわけではありません。

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自転車二人乗りの罰則

自転車事故の二人乗りの罰則については道路交通法121条1項7号に規定があり、2万円以下の罰金又は科料と定められています。

このように刑事罰が定められていますので、警察官に見つかっても注意されるだけだと安易に考えてはいけません(そもそも危険なので二人乗りはやめましょう)。

自転車の二人乗りが許される場合

車体の前部や後部に子どもを乗せた自転車をよく見かけますが、このように自転車に子どもと2人乗りをすることは許されるのでしょうか。

大阪府道路交通規則11条は、乗車人員について以下のとおり定めています。

第11条 法第57条第2項の規定による軽車両の乗車人員又は積載物(積載装置を備える自転車及び自転車により牽引されるリヤカーの積載物に限る。以下この条において同じ。)の重量、大きさ若しくは積載の方法の制限は、次の各号に掲げるとおりとする。

(1) 2輪の自転車の乗車人員は1人を、3輪以上の自転車の乗車人員はその乗車装置(幼児用座席を除く。)に応じた人員を超えないこと。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

ア 16歳以上の運転者が未就学児(小学校就学の始期に達するまでの者をいう。以下同じ。)1人を幼児用座席に乗車させる場合

イ 16歳以上の運転者が未就学児2人を幼児二人同乗用自転車(運転者のための乗車装置及び2の幼児用座席を設けるために必要な特別の構造又は装置を有する自転車をいう。)の幼児用座席に乗車させる場合

ウ 16歳以上の運転者が4歳未満の者1人をひも等で確実に背負う場合(イに該当する場合を除く。)

エ 運転者以外の者1人をタンデム車(運転者及び運転者以外の者1人のための乗車装置を有し、かつ、ペダル装置が縦列に設けられた2輪の自転車をいう。)に乗車させる場合

引用元:大阪府道路交通規則

このように、自転車は原則として1人乗りですが、未就学児を幼児用座席に乗車させる場合や、4歳未満の子どもをひも等で確実に背負う場合などは、幼児と一緒に自転車に乗ることができるとされています。

未就学児というのは、小学校に就学するまでの子どもをいいます。

幼児用座席に子ども2人を乗せ、子ども1人をひもで背負い、子ども3人と一緒に自転車に乗ることは許されません。

幼児を自転車に乗せるときは、幼児にヘルメットを着用させる努力義務があります。

自転車に乗るときにヘルメットを着用する義務

自転車を幼児用座席に乗せるとときの年齢制限については令和2年8月1日施行の法改正がありました。

大阪府警察の説明を引用します。

今回の改正内容について
幼児用座席に乗車させる者の年齢制限について、これまで「6歳未満」とされていましたが、今回「未就学児(小学校就学の始期に達するまでの者)」に改正されることとなりました。(令和2年8月1日施行)
これに伴い、幼稚園等の送迎に自転車を利用される保護者の方等が、小学校入学までの間、子どもを幼児用座席に乗せることが可能になりました。

引用元:大阪府警察

これまでは幼児用座席に乗車できる子どもを「6歳未満」としていたため、自転車を利用して6歳の子どもを幼稚園等に送迎することは違法でした。

法改正により6歳の子であっても小学校入学までは幼児用座席に乗せることができ、子どもを自転車で幼稚園等へ送迎することができるようになりました。

自転車の二人乗りの過失割合への影響

自転車の二人乗りをして自転車事故を起こした場合、二人乗りは過失割合を決めるときにどのように考慮されるのでしょうか。

自転車事故の過失割合というのは、被害者にも過失があるときに過失割合分だけ損害賠償額が減額されてしまうというものです。

被害者に慰謝料等の損害が認められても、過失割合が大きいとされると損害賠償金額が大きく減ってしまうため、自転車事故の損害賠償では過失割合に大きな意味があるのです。

関連するページ

  1. 自転車事故の損害賠償の疑問を解決
  2. 自転車事故の慰謝料の解説
  3. 自転車事故の過失割合の解説

自転車と歩行者の事故

自転車と歩行者の事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」で基本過失割合と修正要素が示されています。

自転車の二人乗りについては、自転車の「著しい過失」として10%の修正が行われるとされています。

自転車の二人乗りは、法律に違反し、事故発生の危険を高めるものであるため、このように基本の過失割合から10%の修正をする(過失を重くする)という考えをとるのです。

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  1. 自転車と歩行者の事故の過失割合は?

自転車同士の事故

自転車同士の事故の過失割合については、自転車と歩行者の事故と違い別冊判例タイムズ38に記載がありません。

そこで、「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本 下巻 )というものを参考にし、過失割合について検討していくことになります。

自転車同士の事故でも、自転車の二人乗りは事故発生の危険を高めるものとして、自転車の「著しい過失」として10%の修正を行うものとされています。

関連するページ

  1. 自転車同士の事故の過失割合は?

参考となる裁判例

自転車事故の裁判例で、自転車が二人乗りをしていることを考慮して過失割合が決められたものです。

裁判例①
二人乗り自転車を、後方から別の自転車が追い抜いた際の事故
判決の理由の中で、「そもそも2人乗りのような危険な運転方法を採ってはならない・・・」として、自転車の二人乗りについて過失を重く判断する理由にしています。

裁判例②
無灯火で2人乗りの自転車と、時速約20㎞で走行する自転車が正面衝突した事故
判決の理由の中で、「二人乗りなどすることなく被告車を運転すべきであったにもかかわらず・・・」として、やはり自転車の二人乗りについて過失を重くみています。

裁判例③
下り坂を走行する二人乗り自転車が、交差点で単車と衝突した事故
判決の理由の中で、「被告自転車を運転するに当たり2人乗りをしてはならず・・・」として、自転車の二人乗りを過失としてとらえています。

自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

自転車の二人乗りの証明方法

事故の相手が自転車の二人乗りをしていたときに、それを裁判で証明するにはどうしたらよいのでしょうか。

二人乗りをしていた二人とも交通事故証明書に記載されていることがありますので、この場合は簡単に証明することができます。

人身事故であれば、実況見分調書等を入手することができるため、そこから二人乗りを読み取ることができる可能性があります。

また、事故現場に設置された防犯カメラの映像を入手することができれば、二人乗りをする相手方がうつっていることも考えられます。

まとめ

自転車の二人乗りは法律で禁止されています。

子どもを乗せるときなど、二人乗りが許される場合もありますが、幼児用座席に乗せる義務などがありますし、ヘルメットを着用させる努力義務もあります。

自転車の二人乗りで自転車事故を起こしてしまうと、過失割合が争いになったときに、過失が重いと判断されてしまう可能性が高いですし、非常に危険なことなので行わないようにしましょう。

加害者が二人乗りだったときには、被害者としては加害者の過失は重いと主張することが考えられます。

弁護士 髙橋裕也

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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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