弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

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Q自転車事故と、自動車事故との違いは?

加害者が保険に入っていないこともある。

自動車については、「自動車損害賠償保障法」(通称:自賠法)という法律が適用され、賠償責任保険(自賠責保険)の契約が義務づけられています(自賠法5条)。
また、自賠責保険の支払額には上限があるため、多くの自動車保有者は、自賠責保険だけでは損害賠償額の全部をまなかえない場合のリスクに備えて、「任意保険」にも加入しています。
そこで、自動車事故でケガをした被害者(被害者が死亡した場合は遺族)は、通常、任意保険や自賠責保険から、損害(治療費や慰謝料など)の賠償を受けることができます。
ところが、自転車による事故の場合、自賠法の適用はなく、法律で保険の締結が義務づけられているわけではありません。
最近では、自転車事故に関する裁判のニュースが報道されるなどしたことから、自転車事故による損害賠償責任に備えるため、「個人賠償責任保険」などに加入する人も増えてきました。一部の自治体(例:兵庫県)では、自転車について賠償責任保険の締結が義務づけられるという動きも出てきています。
また、加害者が加入している別の保険(火災保険など)に、「特約」として個人賠償責任保険が付加されている場合もあります。
しかし、「自転車事故を起こした場合」を想定して意識的に保険に入っている自転車運転者は、自動車運転者と比較すればまだまだ少ないといえます。
加害者に十分な収入・財産がなく、適切な保険にも入っていなければ、被害者は十分な賠償を受けられない可能性が高くなってしまうのです。

後遺障害の等級認定をする専門の機関がない。

治療を続けても後遺障害が残った場合、自動車事故の場合であれば、法律に基づいて設立された専門の組織(自賠責損害調査事務所)によって、「後遺障害等級認定」を受けることができます。
後遺障害等級認定とは、後遺症の程度を、労働能力への影響度によって14段階の等級で認定するもので、認定を受けること自体について、費用はかかりません。
被害者は通常、認定された等級(1級~14級)に応じて、自賠責保険や任意保険から、慰謝料や逸失利益などの支払いを受けることができます。
一方、自転車事故の場合、後遺障害が残っても、自賠責損害調査事務所で等級認定をしてもらうことができません。
このため、被害者側で、後遺障害の内容を踏まえて、「自動車事故の場合であれば、これは○○級の後遺障害に該当すると評価されるはずだ」と、自分で主張をしていく必要があります。
いうまでもなく、このような主張をするにあたっては、医学的な知識や、自動車事故の場合の等級認定がどのような考え方で行われているか、といった点についての知識が必要になります。
ただし、加害者が保険に加入している場合は、保険会社が自社で後遺障害の審査を行ったり、保険会社が自賠責調査事務所の審査サービスを利用するなどして、後遺障害についての見解を示すという流れになるのが一般的です。
被害者が加入している保険によっては、被害者側の保険会社が後遺障害の認定を行う場合もあります。
また、通勤途中の事故などで労災の適用がある場合には、労災で後遺障害等級認定を受けることができますので、加害者に対して労災の認定に基づいた主張を行うことが考えられます。

まとめ

自動車事故自転車事故
被害者は、賠償を受けられるか? ①自動車については自賠責保険の締結が義務づけられている。

②多くのドライバーは、任意保険にもあわせて加入している。

→ 通常、被害者は保険会社から損害の賠償を受けることができる。
①自転車については、賠償責任保険の締結が法律で義務づけられていない。

②個人賠償責任保険などに加入する人も増えてきたが、まだまだ少ない。

→ 加害者に十分な収入・資産がない場合、適切な賠償を受けることができない可能性が高い。
被害者は、後遺障害の等級認定を受けられるか?専門の機関で、費用をかけずに、後遺障害の等級認定を受けることができる。自転車事故による後遺障害の等級認定を受け付ける機関がない。 被害者自身が、後遺障害の評価について主張したり証明したりしなければならない。
弁護士 髙橋裕也

執筆者

西宮原法律事務所
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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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