自転車事故も警察に報告する義務があるの?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

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警察へ報告

自転車事故に遭ったときに、加害者から警察に通報しないよう依頼されることがあるかもしれません。

加害者から「きちんと治療費や慰謝料を払いますから・・・」とお願いされたときに、本当に警察に通報しなくてもいいのでしょうか?

自転車事故では、加害者への損害賠償請求のことだけでなく、警察に対する対応についても正しい情報を知る必要があります。

自転車事故に遭った場合に警察に通報する意味や、重要なポイントなどについて解説していきます。

このページで解決するお悩み

  1. 自転車事故でも警察へ通報する義務があることがわかる
  2. 自転車事故でどのような義務があるかわかる
  3. 警察へ通報しないと罰則があることがわかる

自転車事故の救護措置義務

自転車事故が発生したら、まずは負傷者に対し救護措置を行わなくてはなりません。

道路交通法72条1項前段では以下のとおり定められています。

交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。

道路交通法72条1項前段の「車両等」には自転車も含まれますので、自転車の運転者は直ちに①自転車の運転を停止し、②負傷者を救護し、③道路における危険を防止する措置を講じる義務があるのです。

負傷者を救護する義務があるのですから、もちろん相手が怪我をしていないか確認しなければなりません。

負傷者の救護ですが、応急手当や、救急車の要請、病院へ負傷者を運ぶことなどが求められています。

参考:大阪府警察

自転車事故の報告義務

自転車事故が発生したときは、救護措置をとった後に、直ちに警察に報告する必要があります。

道路交通法72条1項後段では以下のとおり定められています。

この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

警察に報告する内容は、①自転車事故の発生した日時、場所、②自転車事故による死傷者の数、負傷者の負傷の程度、③損壊した物、損壊の程度、④事故車の積載物、⑤自転車事故について講じた措置とされています。

報告内容について迷われるかもしれませんが、基本的には110番通報をして、電話の指示に従って説明すれば問題ありません。

事故現場で110番通報できなかったときも、とにかく速やかに通報するようにしましょう。

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救護義務違反、報告義務違反の罰則

自転車事故における救護措置義務違反については「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」という罰則があります。

道路交通法117条では以下のとおり定められています。

1 車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項前段の規定に違反したときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

2 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

道路交通法117条の5第1項1号では以下のとおり定められています。

次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

一 第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項前段の規定に違反した者(第百十七条の規定に該当する者を除く。)

つまり、自転車(軽車両)の運転者は117条の規定に該当する者ではないので、117条の5第1項1号が適用されることとなり、罰則は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」となるのです。

自転車事故における報告義務違反については「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」(道路交通法119条1項10号)という罰則があります。

自転車事故でも、救護措置義務、報告義務を果たさないと、いわゆる「ひき逃げ」となってしまいます。

罰則である「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」というのは決して軽いものではありませんので、自転車事故が起きたら適切に対応するようにしましょう。

交通事故証明書の発行

自転車事故を警察に報告すると、自動車安全センターという機関から交通事故証明書を発行してもらえるようになります。

交通事故証明書には、事故の日時、場所、当事者などが記載されており、事故の発生を証明する資料となるものです。

交通事故証明書は、加害者に損害賠償請求をしていくために重要なものですが、警察に報告しないと作成されません。

警察に通報することで損害賠償額が増えることはないのですが、自転車事故があったことを証明するためにも警察への報告は重要といえます。

関連するページ

  1. 自転車事故でも交通事故証明書は発行されるの?

警察による捜査

自転車事故を警察に報告し、診断書を提出して人身事故にすると、取調べ、事情聴取、実況見分が行われます。

加害者が起訴されれば、検察庁で供述調書、実況見分調書のコピーを入手することができ、不起訴になれば実況見分調書のコピーを入手することができます。

加害者が少年(20歳未満)であれば、家庭裁判所で供述調書、実況見分調書のコピーを入手することができます。

どれも、事故状況、過失割合を争うのに不可欠な資料なので、警察に報告することでこうした資料を入手できるようになるという意味もあります。

関連するページ

  1. 事情聴取、実況見分で気を付けることは?

警察に通報することによるデメリットは?

自転車事故について警察に通報する義務があるのですから、通報するデメリットを考える必要はありません。

警察に通報したことを後悔する(通報すべきではなかった)というケースは考えにくいです。

まとめ

自転車事故でも、自転車の運転者には救護義務、報告義務があり、道路交通法により罰則があります。

歩行者であっても、交通事故証明書が発行されないことにより、損害賠償請求が困難になる可能性があるので、警察に通報しない理由はありません。

自転車事故が発生したときは、加害者から何を言われても、必ず警察に報告するようにしましょう。

弁護士 髙橋裕也

執筆者

西宮原法律事務所
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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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