車道から歩道に進行した自転車と、横断歩道横断直後の自転車が衝突した事故
大阪地方裁判所平成29年3月29日判決(ウエストロー)
事案
歩道上において、車道から歩道へ進行した自転車と、横断歩道横断直後の自転車が衝突したという、自転車同士の交通事故です。
以下の事情が考慮されていますので、過失割合でお悩みの方は参考にしてください。
- 自転車が車道から歩道へ進入する際の注意義務
- 横断歩道を渡る歩行者の予見義務
- 自転車の高速度走行
- 被害者が高齢者
- 歩行者が横断歩道を外れて進行
過失割合
自転車20% 対 自転車80%
裁判所の判断
裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。
解説
概要
自転車が車道から歩道へ進入する際の注意義務を重くみたことと、被害者が高齢者であることを考慮して、20%対80%の過失割合としたものです。
安全確認義務違反と、相当の高速度で進入したことを重視しています。
歩道の通行について
自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。
自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。
被告が車道から歩道に進入するにあたり、歩道内の歩行者や自転車の有無を十分に確認せず、相当の高速度で走行したことが過失として評価されています。
歩道内の安全確認については、横断歩道を横断後の歩行者や自転車の存在が予想できるとして、安全確認義務違反を重くみています。
また、原告も歩道内の安全確認が不十分であったことが過失として評価されています。
自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。
自転車の速度について
自転車の一般的な速度は時速約15㎞とされ、自転車が徐行する速度(直ちに停止できるような速度)は時速6~8㎞と考えれています。
被告は、歩道内へ進入しようとしていたにも関わらず、徐行するどころか相当の高速度で走行したことが過失とされています。
自転車の速度については自転車事故で問題となる自転車の速度は?で解説しています。
高齢者修正について
被害者が高齢者であるときは、高齢者であることを理由に過失割合を小さくする修正が行われます。
これは弱者保護を根拠にするものなので、加害者が高齢者であることを理由に被害者の過失割合が大きくなることはありません。
被害者、加害者とも高齢者であっても、被害者について高齢者修正されなくなることはありません。
保険会社は、双方が高齢者であるときに高齢者修正を否定することが少なくありませんので注意が必要です。
- 自転車通行可の歩道は走行できるが、歩道に進入するときは安全確認の義務がある
- 安全を確認せずに歩道への進路変更し、相当の高速度で走行していたことを過失とした
類似の裁判例
裁判例①
歩道を走行する自転車の後輪に、公園から歩道へ進入してきた自転車の前輪が衝突したという事故の裁判例です。
歩道を走行する自転車と、歩道へ進入しようとした自転車の事故について過失をどう評価するか参考になります。
⇒歩道を進行する自転車に、路外から歩道へ進出してきた自転車が衝突した事故
裁判所が認めた慰謝料と損害額
裁判所は、入通院慰謝料230万円、後遺障害慰謝料280万円を含む768万6468円を損害として認め、20%の過失相殺後の賠償金額を614万9174円としました。