サイクリング行事における事故で主催者にも責任を認めた裁判例

広島地裁尾道支部平成19年10月9日判決(判時2036号)

事案

車道において自転車が歩行者に衝突したという、自転車と歩行者の交通事故です。

その他

裁判所の判断

サイクリング行事中の事故であったため、行事の主催者にも責任が認められるかが争点となりました。

裁判所は、主催者にも周辺住民へ行事について周知広報しなかったこと、コース監視員を配置しなかったことについて過失があるとして、主催者についても不法行為責任を認め、自転車の運転者と共同不法行為者の関係にあるとしています。

また、裁判所は、自転車と歩行者の過失割合について以下のとおり判断しました。

「本件事故当時、被告Y1は、本件事故現場に至る長い下り坂を、他の仲間三人とともに、本件車両を時速30キロメートル前後で走行させていたこと、また、被告Y1は、ツーリング用ヘルメットを被り、本件車両の形態的特質から勢い前傾姿勢となって前方視認範囲が狭いまま走行させていたこと、そこへ、本件事故直前、車道上の本件車両に対し、前方から犬が駈け寄って来、被告Y1は驚いて犬を右方か左方かに避け、その直後、前方にBの下半身を認めて「あっ、人がいる。」と思ったが、瞬時の後にBに衝突したこと、Bは足の向きからして被告Y1の方へ向いており、路面後方にバタンと倒れ、被告Y1は左側に避けようとしたまま転倒したこと等が認められるところである。
(2)以上によれば、被告Y1の前方注視義務違反は当然免れがたいところではあるが、他方、Bも、前記のとおり、本件事故現場付近には横断歩道があるのにそれ以外の場所で車道に立ち入っていること、また、前記検討の結果によれば、Bが散歩させていた犬が車道上の被告Y1に突如向かっていったことが窺われるが、犬を戸外において散歩させる者はこのように犬が他者の交通等に迷惑をかけることのないよう配慮する義務がそもそもあるというべきであること、さらに、如何に本件車両が自転車のため無音走行してきたためであろうとはいえ、Bも車道に立ち入るに際しよく周囲を注意していれば被告Y1の本件車両に気付かなかった筈はないと思料されること等の事情が認められるところである。
(3)こうしてみると、被告Y1とBの過失割合は、彼此勘案して、結局7対3と判定するのが相当である。」
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解説

概要

裁判所は、歩行者にも横断歩道外の横断であること、散歩中の犬が他者の交通に迷惑をかけることのないよう配慮する義務があること、周囲の確認が不十分であったことなどの過失があることから、過失割合を7対3としたものです。

前方確認義務について

自転車の運転者は「他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」とされており、安全運転義務が課せられています(道路交通法70条)。

自転車の前方を注視しながら走行する義務は、こうした安全運転義務を根拠とするものです。

自転車運転者に前方注視義務が認められています。

歩行者の道路横断について

歩行者も車道を横断するときは車道内の安全を十分に確認する必要があります。

本件でも安全確認が不十分だったとして過失相殺が行われています。

⇒歩行者の道路横断については歩行者が道路を横断するときに守らないといけないことで解説しています。