歩行者が道路を横断するときのルールは?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

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歩行者の道路横断歩行者の道路の横断方法や、道路を横断して自転車事故に遭ったときの過失割合について解説します。

このページで解決するお悩み

  1. 歩行者が道路を横断する方法がわかる
  2. 自転車と歩行者の車道上の事故の過失割合がわかる

歩行者が横断歩道を渡る義務

横断歩道の横断についての規定

歩行者が横断歩道の付近で道路を横断するときは、横断歩道を通行して横断しなければなりません

道路交通法12条1項では以下のとおり定められています。

歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない。

歩行者は、横断歩道を横断することができるのではなく、横断歩道を横断する義務があるのです

歩行者が道路を横断したときの自転車事故では、こうした義務に違反したかが問題となります。

横断歩道の横断と過失割合

歩行者が横断歩道を横断して自転車事故に遭った場合、基本の過失割合は歩行者0%対自転車100%となります(横断歩道を横断中の事故の過失割合)。

歩行者は横断歩道において絶対的といえるほどの保護を受けるため、基本的には過失相殺を行わないとされるのです。

歩行者が横断歩道の付近を横断していた場合、基本の過失割合は歩行者35%対自転車65%となります(横断歩道付近を横断中の事故の過失割合)。

横断歩道の付近とは、別冊判例タイムズ38の解説では「通常人ならば道路を横断するに当たって当該横断歩道を利用するであろうと考えられる距離範囲内」とした上で「おおむね幅員14m(片側2車線)以上の道路で、交通量が多く、車が高速で走行している道路にあっては、横断歩道の端から外側におおむね40mないし50m以内の場所を、それ以外の道路にあっては20mないし30m以内の場所を、それぞれ考えるのが妥当であろう」と説明されます。

横断歩道の付近なのに横断歩道を横断しなかったとして、歩行者にも大きな過失があるとされます(自転車事故の過失割合の解説)。

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歩行者の道路の斜め横断

斜め横断の禁止

歩行者は道路を斜めに横断してはいけません

道路交通法12条2項では以下のとおり定められています。

歩行者は、交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合を除き、斜めに道路を横断してはならない。

道路標識等により斜めに道路を横断することができるとされている場合とは、スクランブル交差点での横断などのことです。

歩行者が道路を斜めに横断すると、道路を横断する時間、距離が長くなり、またどちらかの方向の車両に対し背を向けることとなり、通常の横断よりも危険が増すために禁止されているものです。

斜め横断と過失割合

歩行者が横断歩道以外の場所で道路を横断し、自転車事故に遭った場合の基本の過失割合は歩行者20%対自転車80%です(歩行者が道路横断中の事故の過失割合)。

歩行者が斜め横断を行っていた場合には、この基本の過失割合が歩行者に不利に修正される可能性があります。

車の直前、直後の横断

直前、直後横断の禁止

歩行者は、車両等の直前、直後で横断してはならないとされています

道路交通法13条1項では以下のとおり定められています。

歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によつて道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するときは、この限りでない。

但書にあるとおり、①横断歩道を横断するとき②信号や警察官の手信号に従って横断するときは、直前、直後横断も許されるものとされています。

歩行者の車両の直前、直後横断がどの程度の過失として評価されるかについては、具体的な状況を踏まえた判断が行われることとなります。

直前、直後横断と過失割合

歩行者に直前、直後横断が認められるときは、基本の過失割合が歩行者に不利に修正される可能性があります。

事故状況を十分に調査し、本当に直前、直後横断といえるのか確認する必要があります。

横断禁止場所の横断

道路の横断禁止

歩行者の横断が禁止されている道路では、歩行者は道路を横断することができません

道路交通法13条2項では以下のとおり定められています。

歩行者は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。

歩行者が横断禁止場所を横断していた場合には、歩行者の過失がそれなりに大きいものと評価されてしまいます。

まずは、事故現場の写真や実況見分調書から、横断場所が横断禁止とされているのか確認することが重要です。

横断禁止と過失割合

歩行者が横断禁止の場所を横断して事故に遭ったときは、基本の過失割合が歩行者に不利に修正されます。

関連する裁判例

自転車と道路横断中の歩行者の事故です。

自転車と歩行者(車道上)の裁判例

裁判例①

自転車が丁字路交差点で道路横断中の歩行者に衝突した事故

⇒歩行者にも安全確認をした上で横断すべき注意義務違反があったとしました。

裁判例②

自転車が交差点手前で道路を横断する歩行者に衝突した事故

⇒自転車が広路で、歩行者が信号のない交差点を横断していました。

裁判例③

自転車が対面青信号を確認してから交差点に進入したところ、歩行者が横断歩道の信号が青になった直後に横断を開始し、自転車が歩行者に衝突したという事故

⇒自転車も青信号で交差点に進入し、歩行者も青信号で道路を横断しています。

裁判例④

自転車がある程度近づいてから横断したことが歩行者の過失とされた事故

⇒歩行者にも道路を横断する際の安全確認義務違反があるとしました。

裁判例⑤

自転車が横断歩道横断中の歩行者に衝突した事故

⇒歩行者が若干進路を変えたことについて、過失相殺を行うほどの過失ではないとしました。

まとめ

歩行者が道路を横断するときは、横断歩道の付近では横断歩道を横断しないといけません。

道路を斜めに横断してはいけませんし、車の直前、直後の横断も禁止されています。

道路の横断が禁止されている道路もありますので注意が必要です。

弁護士 髙橋裕也

執筆者

西宮原法律事務所
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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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