歩道において歩行者と対向自転車が接触した事故

大阪地裁平成25年10月3日判決(自保ジャーナル1918号)

事案

歩道において歩行者対向自転車が接触した、自転車と歩行者の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、参考にしてください。

  • 自転車の歩道の通行
  • 歩行者が前方の通行人を追い越そうとした
自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

裁判所の判断

裁判所は、過失相殺の主張について以下のとおり判断しました。

「自転車が歩道を通行するにあたって、自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなる場合には一時停止しなければならない(道交法63条の4第2項)のであって、歩道の通行に当たっては歩行者が自転車に全面的に優先するものである。そして、自転車がこの義務を履行している場合にはよほどのことがない限り事故は発生しないのであって、歩道上での歩行者と自転車の事故については、歩行者側の損害について過失相殺をすべき余地は非常に乏しい。例外的に過失相殺が認められるのは、自転車通行が許されている歩道であることを前提に、自転車において、徐行や車道寄りの部分通行など、自転車に要求される一切の義務を十分履行しており、かつ歩行者においてわずかな注意を払い、事故が発生しないよう通常の歩行方法をとることのみによって事故を回避できたのに、そのような注意を払わずに突然ふらつくなど、歩行者側に著しい前方不注視があり、かつ自転車側において予見が著しく困難といえるような不正常な歩行態様が認められる場合に限られる。したがって、単に歩行者が正面から来た自転車を認識していたというだけでは、過失相殺を相当とすべきものとは到底いえない。

本件についてみると、被告の主張によっても、甲野は単に他の通行人と並んで歩いていただけであり、また原告の主張によっても、甲野は前方の通行人を追い越そうとしていたにすぎないのであって、いずれにしても甲野の通行方法に、被告の予見を著しく困難ならしめるような不正常性があったとはいえない。そうすると、いずれの主張する事実関係を前提としても、本件事故は歩道上で一時停止をせず、甲野の至近距離を自転車に乗ったまま被告が通行したことによって甲野と接触して生じたものであり、本件事故は全面的に被告の過失によるものであって、甲野について過失相殺をすべき理由は全くない。」

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解説

概要

裁判所は、歩道上において歩行者に過失相殺が認められるのは、歩行者側に著しい前方不注視があり、かつ自転車側において予見が著しく困難といえるような不正常な歩行態様が認められるような例外的な場合であり、単に歩行者が正面から来た自転車を認識していたというだけでは過失相殺は認められないとしました。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

⇒自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

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