直進自転車と左折三輪自転車が衝突した事故

東京地裁平成28年2月15日判決(自保ジャーナル1971号)

事案

丁字路交差点において、直進する自転車と、左折進行する三輪自転車が衝突したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、類似の事案で参考にしてください。

  • 丁字路交差点の自転車同士の衝突事故
  • 広路と狭路が交わる交差点
  • 高齢者修正

なお、三輪自転車を運転していた被害者は裁判までに死亡しており、相続人が原告となり本訴訟を提起したものです。

自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車30%対自転車70%

自転車30% 対 自転車70%

裁判所の判断

裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

「東西道路の幅員は南北道路の幅員に比べて明らかに広く、東西道路は南北道路に優先するから、被告は、原告三輪車に優先して交差点を進行できる関係にあるが、本件交差点に進入時に原告三輪車を認めたのであるから、原告三輪車が被告自転車との衝突を回避する態勢にあることを確認して進行すべきところ、原告三輪車が安全に停止する態勢になかったことを覚知しないまま直進を続けており、安全確認が不十分だったといわざるをえない。そして、被告自転車が、速度調整やハンドル操作により、原告三輪車との衝突を回避することもできたと認められる。したがって、被告の過失が認められる。」

「Aは、南北道路から、幅員が明らかに広い東西道路に進入するのであるから、東西道路が西から東への一方通行路であるとはいえ、現にAも進行しようとしていたとおり、自転車に一方通行規制は及ばず、かつ歩行者の往来も想定すべきであり、東西道路の南側に設置された横断歩道に進入する前に、十分に安全を確認すべきである。したがって、衝突場所が横断歩道や歩道上であるか車道上であるかにかかわらず、安全を確認しないまま東西道路に進入したAの過失は重大である。」

「したがって、過失相殺をすべきであり、過失割合は、原告三輪車が三輪車であること、Aが事故時70歳であること、Aが受傷したことをAに最大限有利に考慮しても、A70、被告30とするのが相当である。」

裁判所は、道路の優先関係を考慮して、被害者には左折進行する際に十分に安全を確認する義務があったとして、その過失を重く評価したものです。

電話での簡単なご質問にも対応!お気軽にご相談ください
お電話で無料相談
LINEで無料相談

解説

概要

広路を直進する自転車と、狭路から交差点を左折進行する自転車の衝突事故であることから、左折進行する側の過失を重くみたものです。

広路の優先について

交差点を通行するときは、明らかに広い道路を進行してくる自転車が優先とされています(道路交通法36条3項)。

一方の道路の方が明らかに広いという事情が考慮されています。

⇒交差点の広路の優先については自転車が交差点を通行するときのルールは?で解説しています。

高齢者修正について

被害者が高齢者である場合には、被害者の過失割合を小さくする修正が行われます。

原告が事故当時70歳であったことから、高齢者修正が行われています。

  • 広路を走行していても、交差点の安全確認を怠った過失がある
  • 狭路から広路へ左折進入するにあたり安全確認を怠った過失は大きい

類似の裁判例

裁判例①

丁字路交差点で自転車同士が衝突した事故の裁判例です。

丁字路交差点で自転車同士が衝突した事故

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、傷害慰謝料75万円、後遺障害慰謝料110万円を含む330万7064円を損害として認め、過失相殺後の金額を99万2119円としました。