自転車同士の交差点における非接触事故

東京地裁八王子支部平成13年 6月14日判決(交通事故民事裁判例集34巻6号)

事案

自転車が交差点に進入したところ、交差道路から進入してきてきた自転車を避けようとして転倒したという、自転車同士の非接触の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、類似の事件で参考にしてください。

  • 自転車同士の非接触での転倒事故
  • 自転車のサドルが高い状態であった
  • 自転車の前方籠に大きな買物袋を入れていた
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車30%対自転車70%

自転車30% 対 自転車70%

裁判所の判断

裁判所は、自転車同士が接触していないことを踏まえ、加害自転車の責任について以下のとおり判断しました。

「天神山通りと被告進行路の交差点は、被告進行路に沿って天神山通りの歩道の角まで人の背の高さより高い大谷石の塀が築かれているため、被告進行路から見て左側の天神山通りの歩道の見通しが非常に悪いにもかかわらず、天神山通りの車道を通行する自動車の動きのみに注意を払い、左側から天神山通りの歩道上を進行してくる自転車や通行人について注意を払うことなく、一時停止も徐行も減速もせずに天神山通りとの交差点内に被告自転車を進行させ、このことによって、原告の被告自転車との衝突回避行動を余儀なくさせているのであるから、たとえ、原告自転車と被告自転車が本件路上において衝突していなかつたとしても、被告には、一時停止義務違反、徐行義務違反及び前方不注視の過失があるといわざるを得ない。
そして、被告の上記過失によって、原告が原告自転車ごと転倒したのであるから、被告は、民法709条に基づき本件事故により原告に生じた損害を賠償すべき義務があると解される。」

また、被害自転車が、身長に比べてサドルが高く、前かごに大きな買い物袋を入れて不安定な走行をしていたことから、過失割合について以下のとおり判断しました。

「原告は、ゆっくりと徐行しながら進行してはいたものの、被告進行路との交差点手前で一時停止をして被告進行路を進行してくる車両に対して注意を払うことをしなかったのであり、さらに、原告は、原告が身長に較べてサドルの高い原告自転車に乗り、かつ、原告自転車の前の籠に比較的大きな買い物袋を入れ、急ブレーキを掛けたときなどにハンドルを取られやすく、不安定で倒れやすい状態のまま原告自転車を運転しており、このことが、被告自転車が原告自転車に衝突をしたとは認められないにもかかわらず、原告が、被告自転車との衝突回避行為によって原告自転車のバランスを失い、その結果転倒するまでの事態に至ったことに寄与していると考えられること、他方、被告は、被告進行路から見て左側の見通しが悪かったことから、被告進行路の道路の中心線よりやや右側を進行していたこと、以上の点を考慮すれば、被告に、一時停止義務違反、徐行義務違反及び前方不注視の過失があることは否定できないが、本件事故の発生については原告の側にむしろ落ち度が多いというべきであって、過失割合は、原告が7割、被告が3割と判断するのが相当である。」
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解説

概要

自転車同士の非接触事故ですが、衝突回避行動を余儀なくされたとして責任を認めています。

サドルの高い自転車に乗っていたことや、前かごに大きな買物袋を入れていたことが転倒に寄与したとして、被害者側の過失として評価されています。

徐行義務違反について

自転車は左右の見通しのきかない交差点に進入するときは徐行しなければならないとされています(道路交通法42条)

一時停止、徐行ないし減速することなく交差点に進入したことが徐行義務に違反すると判断されました。

⇒交差点の徐行義務については自転車が交差点を通行するときのルールは?で解説しています。

  • 被害者には不安定な状態で走行していたことが、非接触事故において転倒を招いたなどとして、被害者側の過失が大きとした

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