路側帯で右に進路変更した自転車と後続自転車の衝突事故

令和元年7月12日東京地裁判決(自保ジャーナル)

事案

自転車が路側帯で電柱を避けるために右に進路変更したところ、後方から走行してきた自転車と衝突したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されています。

  • 自転車の進路変更
  • 自転車の路側帯の通行
  • 被害者が高齢者
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車30%対自転車70%

自転車30% 対 自転車70%

裁判所の判断

裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

原告は、後方を確認せず、進路変更の合図をすることなく右方に進路変更をしたものであって、原告の過失は小さくない。

他方で、本件道路の路側帯の幅や路側帯内に電柱があることからすれば、被告にとっては、原告が電柱を避けようとして右方に進路変更をし、その際に車両外側線のやや車道側にまで進出することは容易に予測することができたといえ、それにもかかわらず、被告は、電柱の付近で原告自転車の右側を通過するに当たって、原告自転車の動静を十分に注視せず、十分な車間距離を確保しなかったのであるから、被告の過失は大きい。

そして、原告が本件事故当時80歳と高齢であったことを併せ考慮し、双方の過失を対比すると、本件事故における過失割合は、原告30%、被告70%とするのが相当である。

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解説

概要

自転車の進路変更による衝突事故では、進路変更の際に後方の安全確認を怠った過失は重いとされ、先行自転車(進路変更した自転車)の過失の方が、後続自転車の過失よりも重いとするのが一般的な考え方です。

本件では、先行自転車が電柱を避けるために右に進路変更をするのは容易に予測できたとして、後続自転車の過失を重いとしております。

自転車の進路変更の事故であっても、「後続自転車の過失も重いのでは?」と思える事故状況はありますので、そうした事件において参考になる裁判例です。

基本過失割合

自転車同士の進路変更の事故

自転車事故の過失割合は「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本下巻 日弁連交通事故相談センター )というものを参考にし、過失割合について検討していくことが考えられます。

進路変更自転車の事故の基本過失割合は、先行車60%対後続車40%とされています。

進路変更する際には後方の安全確認を行う義務があるため、先行車の過失が重いとされるのです。

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  1. 自転車事故の過失割合の解説

 

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裁判所は、傷害慰謝料149万円、後遺障害慰謝料110万円を含む404万3396円を損害として認め、過失相殺後の金額を283万0378円としました。