歩道上で先行自転車の前輪と追い抜き自転車の後輪が接触した事故

大阪地裁平成25年2月7日判決(自保ジャーナル1897号)

事案

歩道上同一方向に進行する自転車同士の接触事故であり、追い抜かれた自転車が左に進路変更したため、先行自転車(追い抜かれた自転車)の前輪左側面部が、後行自転車(追い抜いた自転車)の後輪右側面部に接触したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されています。

  • 自転車の側方間隔不十分での追い抜き
  • 自転車の後方確認不十分での左折
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車50%対自転車50%

自転車50% 対 自転車50%

裁判所の判断

裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

「本件事故態様を前提とすると、被告については、足踏み式自転車を運転して走行し、先行車である太郎自転車を追い抜こうとするにあたり、太郎自転車が本件交差点を左折することを予測することができたこと、本件歩道の幅員が歩道柵の内部が1.9メートルと狭かったことから、追い抜きを差し控えるか、追い抜きを行うのであれば、警音機を鳴らす等して太郎自転車に注意を喚起し、十分な側方間隔を確保した上でこれを行うべきであったのに、これを怠り、十分な側方間隔を確保しないまま、漫然と追い抜きを開始したことにより、本件事故を発生させた過失があると認められる。

その反面、太郎についても、足踏み式自転車を運転して走行し、本件交差点を左折しようとするに当たり、左方には他の足踏み式自転車が通行することのできる余地があったのであるから、自車を追い抜こうとする他の自転車等があることを予測することができたのに、左方を十分に確認することなく左折をしようとして左に進路を変更したことにより、自車の前輪左側面部に被告自転車の後輪右側面部を接触させて、本件事故を発生させた過失があると認められる。なお、原告らの主張を考慮しても、太郎も被告もともに同様に足踏み式自転車を運転していたことからすれば、その一方を特段交通弱者として取り扱う必要性があるとは認められないのであるから、太郎を歩行者と同様に評価すべきであるとはいえない。また、太郎が進路変更の準備段階で後方確認をするためにハンドルを傾けていた可能性があるという原告らの主張を考慮しても、後方確認をせずに、後続して進行してくる他の自転車等の進路を妨げることは差し控えるべきであることに変わりはない。

そして、本件事故態様及び当事者の過失の内容を考慮すれば、本件事故における過失割合は、太郎及び被告ともに50%とみるのが相当である。」

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解説

概要

本件では、狭い道路であるにも関わらず警音機を鳴らすこともなく漫然と追い抜きを開始したことや、先行自転車(追い抜かれた自転車)が左方の安全を十分に確認せずに左折しようとしたことなどが考慮されています。

後方自転車への注意義務

自転車が進路変更するときには後方の安全確認を行う義務があります。

本件でも左方の安全確認を十分に行わずに左折したことが過失とされています。

⇒自転車の後方確認については自転車が後続車との関係で注意することは?で解説しています。

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