自転車同士が幅の狭い道路ですれ違った際の接触事故

大阪地方裁判所平成30年11月16日判決(自保ジャーナル2038号)

事案

自転車同士狭い道路ですれ違おうとして接触したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、類似する事故の過失割合でお悩みの方は参考にしてください。

  • 自転車同士のすれ違い
  • 道幅の狭い道路での事故
  • 道路中央からのはみ出し
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車40%対自転車60%

自転車40% 対 自転車60%

裁判所の判断

裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

「被告は、被告車を運転して本件道路を走行するに当たっては、道路中央から左の部分を通行した上、前方を注視し、道路状況に応じてハンドル、ブレーキ等を適切に操作して、対向する自転車と衝突しないように運転すべき注意義務を負っていたにもかかわらず、これを怠り、前方の見通しが必ずしも良くないにもかかわらず、被告車を本件道路中央よりやや右寄りを走行させた過失によって本件事故が発生したというべきである。」

「他方、原告としても、本件道路は幅が狭く、対向車と衝突する危険性は高いのであるから、前方注視し、前方の見通しが悪い場合には適宜速度を調節するなどして、対向車を発見した場合にはこれを回避すべきであったにもかかわらず、相当程度の速度を保ったまま、本件トンネルに進入し、また被告車を発見した後も回避措置が遅れたことにより本件事故が発生したものである。」

「以上のような過失の内容を比較すると、道路中央をはみ出したことにより衝突の危険を惹起した原告の過失の方が大きいというべきであるが、そもそも本件道路は道幅が狭く、対向車との衝突の危険性が大きいこと、自転車においては、その速度からして一般的に回避が容易であり、左側通行についても必ずしも徹底されていない現状があることからすると、中央部分をはみ出したことをそれほど大きく評価することは相当ではなく(はみ出しの程度自体もわずかである。)、また、原告も回避行動が遅れているばかりでなく、原告の速度が速かったことが本件事故による損害を拡大した面を否定することはできないことも併せ考慮すると、本件事故の過失割合は、原告4に対し、被告6と認めるのが相当である。」

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解説

概要

自動車に左側通行義務違反が認められれば極めて大きな過失と評価されますが、自転車の左側通行義務違反をどの程度考慮するかが問題となっています。

自転車は速度が遅く回避が簡単であることや、自転車は左側通行がそれほど徹底されていない現状があることから、それほど大きく考慮しないとしたものです。

この裁判例ではこのような判断をしましたが、一般に左側通行義務違反についてはそれなりに大きく評価されます。

自転車の道路中央からのはみ出し

自転車同士の正面衝突事故では、基本過失割合を50対50とした上で、左側通行義務違反等の修正要素により過失割合を修正していくことになります。

道路交通法17条4項は、車両(自転車を含む)は道路の左側を通行しなければならないとしています。

道路交通法第17条

4 車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。

引用元:道路交通法第17条 e-Gov法令検索

本件では、自転車は速度からして回避が容易であること、自転車の左側通行が必ずしも徹底されていない現状があることから、中央部分からのはみ出しをそれほど大きく評価しないとされました。

自転車の速度について

自転車の一般的な速度は時速約15㎞、徐行する速度は時速6~8㎞とされています。

本件では原告の自転車の速度が速かったことが損害を拡大した面があるとして過失として考慮されています。

自転車の速度については、高速度で走行していたことを本人が認めている場合もありますし、刑事記録等により立証していくことが考えられます。

自転車の速度については⇒自転車事故で問題となる自転車の速度は?

  • 被告は、自転車で道路左側を走行すべきところ、中央よりやや右寄りを走行した過失がある
  • 原告も、道路幅が狭いのだから、適宜減速するなどして安全に走行する義務があるところ、これを怠った過失がある
  • 被告が中央より右寄りを走行した過失の方が大きいが、自転車走行の実態を踏まえてそれほど大きくは評価しなかった

類似の裁判例

裁判例①

店舗前の歩道で自転車同士が正面衝突をした事故の裁判例です。

自転車同士の正面衝突の事故という点で共通しています。

店舗前の歩道において自転車同士が正面衝突をした事故

裁判例②

自転車同士の正面衝突事故で、一方が無灯火、右側走行の事故の裁判例です。

正面衝突事故ですが、無灯火、右側走行を重視した判断を行っています。

自転車同士の正面衝突事故

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、入通院慰謝料150万円、後遺障害慰謝料400万円を含む2770万5870円を損害として認め、過失相殺として4割を控除して過失相殺後の損害額を1662万3522円としました。

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