路地から歩道に進入した歩行者と歩道走行自転車が衝突した事故

さいたま地裁平成23年11月18日判決(自保ジャーナル1866号)

事案

自転車が歩道を走行していたところ、歩道と直角に交差する左方の路地から歩行者が進入し、自転車が歩行者に衝突したという、自転車と歩行者の交通事故です。

自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者10%対自転車90%

歩行者10% 対 自転車90%

裁判所の判断

裁判所は、自転車が歩道において車道と反対寄りの部分を走行していたことなど、自転車の過失が重いことを指摘した上で、自転車と歩行者の過失割合について以下のとおり判断しました。

「原告においても、自転車の走行が許されている本件歩道内に路外の本件路地から進入して本件歩道を通行するに当たり、自転車が本件歩道上の走行上の支障等から本件路地側の部分を走行してくる可能性を認識することができたものと認められる。その場合、本件路地の両側の生垣によって、本件路地からの左右の見通し及び本件歩道を走行する自転車の運転者からの本件路地への見通しが不良であり、かつ、本件路地の出入口付近は、急勾配の下り坂であることから、本件歩道内を走行する自転車の運転者にとって、ここを下ってくる歩行者につき、本件歩道内に急に進入してきたものと認められるため、急制動が間に合わない事態も予想されるのである。したがって、原告は、そのような出入口付近に急勾配のある本件路地から本件歩道内に進入するに当たり、本件路地の出入口の前で一時停止するなどして左右の安全の確認をして本件歩道内に進入していれば、本件事故を避けることができたことが認められる。

このように、原告にも、不注意と評価し得る過失を肯定することができるものの、本件事故における責任の度合いとしては、自転車の運転者である被告による上記の交通法規違反に基礎付けられた過失の程度が格段に大きく、これと比べれば、歩行者である原告の過失の程度は相当に低いものというべきであるから、これを10%と認めるのが相当である。」

歩行者にも不注意と評価できる過失があるが、その過失の程度は自転車運転者に比べれば相当に低いとして、過失割合を1割としたものです。

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解説

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

歩行者にも不注意があるが自転車運転者に比べれば低いとして10%の過失相殺が行われました。

⇒自転車の歩道の通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

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裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、入通院慰謝料173万円、後遺傷害慰謝料550万円を含む2336万3902円を損害として認め、過失相殺等の後の金額を1706万3208円としました。