11歳の小学生の自転車事故につき母親に民法714条1項の責任を認めた裁判例

神戸地裁平成26年9月19日判決(交通事故民事裁判例集47巻5号)

事案

歩行者11歳の小学生が運転する自転車が衝突したという、自転車と歩行者の交通事故です。

自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者0%対自転車100%

歩行者0% 対 自転車100%

裁判所の判断

裁判所は、過失相殺について以下のとおり判断しました。

「本件事故は、被告子が、本件道路上を被告自転車で走行するに際し、自車の前方を注視して交通安全を図るべき自転車運転者としての基本的注意義務があるにもかかわらず、これを怠り、友人の言動に気を取られて後方を振り返り、前方不注視のまま進行した結果、衝突直前に至るまで原告に気付かなかったことによって発生したものと認めるのが相当である。
被告らは、原告につき、①前方から被告自転車がゆっくり接近してくるのが見える状況であったのに避けることをせず接触したこと、②本件道路の左側を歩行していた(歩行者の右側通行の原則に違反した)ことを考慮し、過失相殺されるべきであると主張する。しかし、上記認定事実によれば、①の点につき、原告は、被告自転車の接近に危険を感じた時点で少し左側(北側)に寄って被告自転車を避けようと回避措置を取ったものの、被告子が同じ北側にハンドルを切ったため、衝突を回避できなかったこと、②の点につき、被告子も、被告自転車を運転するに当たり左側通行をしていなかった(軽車両の左側寄り通行の原則に違反した)ことが認められるから、本件事故の発生について、原告に過失相殺の対象としなければならない程の過失があったとは認められないというべきである。」

裁判所は、被告の主張する原告の落ち度として、自転車を避けなかったこと、道路左側を歩行していたことについて、上記のとおり判断して過失相殺を認めませんでした。

また、裁判所は、母親の責任について以下のとおり判断しました。

「被告子は、本件事故当時11歳の小学生であったから、未だ責任能力がなかったといえ、民法709条による責任を負わない(被告らは、被告子の責任を自認しているが、法的評価についての自白は成立しない。)。
本件事故により原告に生じた損害については、被告子の唯一の親権者で、被告子と同居してその監護に当たり、監督義務を負っていた被告母が、民法714条1項により賠償責任を負うものといえる。」

裁判所は、自転車を運転していた11歳の小学生の責任について、責任能力がないとして民法709条による責任を負わないと判断し、かかる責任の有無については法的評価であるから自白が成立しないとしました。

その上で、唯一の親権者で、同居して監護に当たり、監督義務を負っていた母親が714条1項により賠償責任を負うと判断したものです。

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解説

左端通行義務について

自転車は道路の左側端を走行する義務があります。

自転車が道路の右側を走行していたことが過失として評価されています。

⇒自転車の車道の走行については自転車が道路を通行するときのルールは?で解説しています。

右端通行義務について

歩行者は道路の右側端によって歩行しなければならないとされています。

本件でも左側を通行していたことが過失とされています。

歩行者の右側端歩行義務については歩行者が道路を通行するときで解説しています。

自転車事故における親の責任について

自転車事故における親の責任は自転車事故の損害賠償で解説しています。

裁判所が認定した慰謝料と損害額

裁判所は、傷害慰謝料130万円、後遺障害慰謝料66万円を含む255万8106円を損害として認めました。