歩道において歩行者に後方から進行してきた自転車が衝突した事故

京都地裁平成25年10月8日判決(自保ジャーナル1918号)

事案

歩行者が前を歩いていた友人を追い越そうと左に寄ったところ、後方から脇を通り抜けようと進行してきた自転車が衝突した自転車と歩行者の交通事故です。

自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者5%対自転車95%

歩行者5% 対 自転車95%

裁判所の判断

自転車運転車が負傷しており、加害歩行者,被害自転車の関係になるが、裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

「ア 自転車の通行が許された歩道を走る自転車には、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行し、歩行者の側方を通過するときは、歩行者との間に安全な間隔を保ち、又は徐行する義務があるというべきである(道路交通法17条の2第2項、18条2項参照)。そして、B橋東側歩道は幅員が狭く、本件事故当時、歩道上は通学途中の中学生らで混雑した状態にあったのであるから、ここを自転車で通行しようとする原告は、歩行者の動静に注意を払い、歩行者の後方から歩行者の脇を通過するときは、歩行者に自らの存在を知らせるとともに、歩行者の動静の変化にも対応できる程度の速度と態様で進行する義務を負っていたというべきである。

しかるに、原告は、被告Aらが1列になって原告の前の自転車を避けたのを見て、被告Aらがそのまま1列で進むものと軽信し、被告Aらが後方からくる原告の存在に気付いていない可能性や、歩行者の列が乱れて進路前方が塞がれるといった可能性についての予見を怠り、直ちに足を着いて止まれるような態様で進行せず、ゆっくりとした速度ではあったにせよ漫然と自転車をこぎ、衝突や転倒を回避する義務を怠ったというべきである。

イ このように、自転車の通行が許された歩道を走る自転車には歩行者に注意すべき義務があるのであって、歩行者側に自転車に注意すべき義務があるとは認められず、自転車にとって予見可能な態様で歩行している限りにおいて、歩行者に過失は認められないというべきである。

この点、被告Aは、B橋東側歩道の幅員が狭く、通学時間帯にあっては、自転車も頻繁に通行し、ここを2列で歩くことは他の通行の妨げとなることがあることを認識し、歩道の右側を1列になって歩いていながら、後方を確認せず急に進路を変更しており、このような被告Aの進路変更は原告にとって必ずしも予見可能なものであったとはいいがたく、被告Aに過失が全くないとはいえない。

もっとも、自転車である原告に対して歩行者である被告Aは交通弱者にあたること、自転車の通行が許されているとはいえ歩道を走行する自転車の注意義務は歩行者のそれに比してもとより大きいこと、被告次郎は原告の自転車の存在に気付いていなかったことが窺える上、被告Aが左側に出たのは、前を歩く友人を追い越そうとしたからにすぎないこと、また歩行者に進路変更に当たって後方確認が必要であるとの認識は一般に乏しいことを併せ考慮すれば、両者の過失の程度は、原告につき95%、被告Aにつき5%と認めるのが相当である。」

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解説

裁判所は、歩行者が後方を確認せず急に進路変更をしたことから過失ありとしましたが、歩道における自転車の注意義務は歩行者に比べて大きいことなどから、自転車の過失を95%,歩行者の過失を5%としたものです。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

⇒自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

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