歩道上の歩行者に自転車が後方から衝突した事故

名古屋地裁平成24年1月13日判決(自保ジャーナル1869号)

事案

歩道上歩行者に、自転車が後方から衝突したという、自転車と歩行者の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、参考にしてください。

  • 実況見分調書から事故状況を認定
  • 歩道で立ち止まる歩行者への衝突
自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者0%対自転車100%

歩行者0% 対 自転車100%

裁判所の判断

事故態様が争点となり、自転車運転者は「自転車の前輪が原告(歩行者)の踵に軽く接触した程度の事故である」と主張したのに対し、裁判所は以下のとおり判断しました。

「被告は、被告自転車が原告に当たるか当たらないかくらいの事故であった旨供述するが、被告立会の実況見分に基づいて作成された実況見分調書には、本件事故後、被告自転車が衝突地点から0.7メートル進んで停止し、原告が衝突位置から2.2メートル移動した位置で止まった旨を被告が指示説明した旨の記載がされており、被告の供述は明らかにこの記載と矛盾する。そして、警察官が被告の説明と異なる内容を被告の指示説明として記載する理由は本件では特段認められないこと、上記実況見分調書に記載された程度の事故であっても、原告にそれほど大きな傷害が発生しないことは何ら不自然ではないこと、上記実況見分調書に記載された内容は原告の供述する本件事故の態様とも符合することなどからすれば、本件事故は、上記実況見分調書のとおりの内容の事故であったと認めるのが相当であり、被告の供述中これに反する部分は採用できない。」

裁判所は、自転車運転者の主張する事故態様が、実況見分の際の指示説明と矛盾することを指摘した上で、本件事故態様を歩行者主張のとおりであると認定しました。

また、過失相殺については以下のとおり判断し、歩行者には何ら過失は認められないとしました。

「(3)そして、証拠(略)によれば、本件事故は、原告が本件事故現場の歩道上に被告自転車に背を向けて立っていた際、同歩道上を被告自転車を運転して西進してきた被告が、原告の手前約2.3メートルの地点で原告に気がついて慌てて両手のブレーキを掛けたが間に合わずに原告の左下腿に被告自転車の前輪を衝突させた事故であると認められる。

そして、佇立していただけの原告を手前2.3メートルになるまで認識しなかった被告には前方不注視の過失が認められるのに対し、歩道上に佇立していただけの原告には何ら過失は認められない。」

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解説

概要

歩道上で立っていただけの歩行者には何ら過失は認められないと判断したものです。

自転車運転者の主張について、実況見分調書に記載された指示説明と異なることを理由に、信用できないと判断したものです。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

本件では歩行者は立っていただけであり過失は認められないとされました。

⇒自転車の歩道の通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

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