歩道上の歩行者に交差点から歩道に進入した自転車が衝突した事故

大阪地裁平成15年2月20日判決(交通事故民事裁判例集36巻1号)

事案

歩道上の歩行者に、交差点から歩道に進入した自転車が衝突したという、自転車と歩行者の交通事故です。

以下の事情が考慮されています。

  • 自転車の速めの速度での歩道進入
自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者0%対自転車100%

歩行者0% 対 自転車100%

裁判所の判断

裁判所は、自転車側の過失について以下のとおり述べ、過失相殺を行わないと判断しました。

「被告Y1は、被告自転車を運転して歩道上に進入しようとするに際し、同歩道上にはかなりの歩行者がいたのであるから、歩行者に自転車を衝突させることがないよう、歩行者の動静に十分注意するとともに、歩道の手前で一時停止するか、もしくは歩行者との間に十分な距離を保った上徐行するなどして、安全に通行すべき注意義務があったというべきところ、日頃から本件交差点を横断する際にしているように、北方に向かって横断を開始した歩行者らの後方に回り込んで歩道上に進入できるものと軽信し、歩道上の歩行者らの動静に十分な注意を払わず、かつ、速めの速度のまま、本件交差点南西角付近から歩道上に進入しようとした重大な過失があるから、民法709条に基づいて、原告の損害を賠償すべき義務を負う。」

「以上のとおり、原告に何らかの過失が存したことが証拠上明確には認められないことに加え、被告Y1の運転方法が、前記認定のとおり、歩行者の後方に回り込めば歩道上に進入できるとの安易な見込みに基づいて、人通りの多い歩道上に、十分な安全確認も減速もせずに被告自転車で進入しようとするという極めて無謀なものであったことを考慮すれば、原告の損害につき過失相殺するのは相当でないというべきである。」

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解説

概要

原告は、歩道上で横断歩道の信号待ちをしており、信号が青になったため他の歩行者に続いて横断を開始しようとしていただけであり、過失は認められないと判断されたものです。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

被告は、歩道内の安全に注意を払わず、速めの速度で走行していたことに大きな過失があると判断されました。

⇒自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

  • 自転車には歩道に進入するにあたり十分に安全確認をする義務があるところ、これを怠った過失があるとした
  • 歩行者には過失があることが証拠上明確に認められず、自転車の運転が無謀であったことも踏まえ過失相殺をしないとした

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裁判例①

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