荷物を運びながら歩道を横切った高齢者に自転車が衝突した事故

大阪地裁平成28年12月12日判決(自保ジャーナル1994号 控訴中)

事案

高齢者が車道左端に停車したトラックから荷物を受け取り、歩道を横断しようとしたところ、歩道上を直進してきた自転車に衝突されたという、自転車対歩行者の交通事故です。

以下の事情を考慮していますので、類似の事案で参考にしてください。

  • 自転車の歩道の通行
  • 歩行者の歩道横断
自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者0%対自転車100%

歩行者0% 対 自転車100%

裁判所の判断

裁判所は、被告の過失相殺の主張について以下のとおり判断しました。

「被告は、自転車通行可の指定のされた本件歩道上で普通自転車を運転していたものであるところ、普通自転車は、歩道を通行することができる場合であっても、徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の進行を妨げることとなるときは一時停止をしなければならないこととされている(道路交通法63条の4第2項)。

したがって、被告としては、本件歩道を通行するに当たっては、進路前方の歩行者の有無を注視するとともに、歩行者の存在が予測されるときには、その通行を妨げることのないように、いつでも停止ないし減速するなどして衝突を回避することができるような速度と方法で通行すべき義務があったにもかかわらず、これを怠り、安易に歩行者が存在しないものと軽信し、進行した結果、本件事故が発生したものと認められる。

したがって、被告は、原告に対し、民法709条に基づき、本件事故により原告に発生した損害を賠償する義務を負う。」

「歩行者は、歩道上で走行する自転車に対して注意する義務は、原則として負っていないというべきである上、原告が本件事故当時78歳と高齢であったこと、本件事故当時、原告以外にも本件トラックの荷台から商品を運ぶために本件歩道を横断していた者がおり、被告にとって同トラックの陰から原告が出てくることも十分予測可能であったことなどからすると、本件について、過失相殺をしなければ損害の衡平な分担という観点から妥当性を欠くとまでは認められない。

よって,本件においては,過失相殺をすべきとはいえない。」

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解説

概要

裁判所は、歩道上での歩行者の自転車に対する注意義務について、原則として負っていないとしました。

被害者が高齢であることや、他にも作業していた者がいて横断者が予測可能であったことなどから、過失相殺を認めませんでした。

歩道で作業をしていたとしても、歩行者と同じように優先的に扱われると判断したものです。

歩行者であっても、荷物を運ぶような作業ではなく、自転車にとって危険な態様の作業をしていれば過失が認められる可能性はあると考えられます。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

被告が歩道内の歩行者や自転車の有無を十分に確認せず走行したことが過失として評価されています。

⇒自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

高齢者修正について

被害者が高齢者であるときは、高齢者であることを理由に過失割合を小さくする修正が行われます。

高齢者の責任が軽いというよりも、高齢者保護の観点から修正が認められるものです。

原告が78歳と高齢であることが考慮されています。

  • 自転車が歩道を通行するときは、徐行し、歩行者の妨げになるときは一時停止しないといけないのだから、自転車運転者の過失は大きい
  • トラックの陰から荷物を運ぶため横断する者も予見できる
  • 高齢者であり高齢者修正を行う

類似の裁判例

裁判例①

コンビニから歩道に出てきた歩行者に自転車が衝突した事故の裁判例です。

歩道において歩行者に自転車が衝突した事故

裁判例②

歩道で道路横断のために歩き出した歩行者に自転車が衝突した事故の裁判例です。

歩道において道路横断のため歩き出した歩行者に自転車が衝突した事故

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、入通院慰謝料239万0000円、後遺障害慰謝料280万0000円を含む1518万5136円を損害として認め、過失相殺を行いませんでした。

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