道路の横断を開始した歩行者が自転車に右足を轢かれた事故

東京地裁平成22年3月10日判決(自保ジャーナル1833号)

事案

歩行者が、自転車の存在を確認したがまだ距離があると判断して道路の横断を開始したところ、走行してきた自転車に右足を轢かれたという、自転車と歩行者の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、参考にしてください。

  • 歩行者の横断歩道のない道路での横断
  • 自転車がある程度近づいてからの横断
  • 歩行者の通行が多い場所での事故
自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者20%対自転車80%

歩行者20% 対 自転車80%

裁判所の判断

裁判所は、過失割合について以下のとおり判断しました。

「本件事故は、近くには横断歩道がない場所において、それほど広くはないが歩行者の歩行が可能な幅員の路側帯から道路の横断を開始した歩行者(原告)と道路を走行してきた自転車(被告)とが接触した事故であるところ、被告には道路を走行するに当たって進行前方に対する注意が不十分であったと認められるが、他方、原告も道路を横断するに当たって道路を走行してくる車両の有無やその動静に対する注意が十分でなかったことが認められ、その他、両者が接触した位置から考えて、原告は被告車がある程度近づいてから横断を開始したと考えられること、本件現場は駅近くの商店街に位置していて歩行者の通行が多いことが想定され、自転車を運転する被告としては歩行者に通常よりも注意する必要があることなど、本件口頭弁論に表れた一切の事情を考慮すれば、原告の過失が20%であるのに対して、被告の過失は80%とするのが相当である。」
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解説

概要

裁判所は、事故現場が駅近くの商店街で多数の歩行者の通行が想定されることや、歩行者が自転車がある程度近づいてから道路の横断を開始したことなど、具体的な事情を考慮して過失割合について判断したものです。

歩行者の道路横断について

原告も、道路を横断するにあたり、道路を走行してくる車両について注意が不十分であったとして過失相殺が行われました。

⇒歩行者の道路の横断については歩行者は道路をどのように横断しなければならないのか?で解説しています。

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裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、入通院慰謝料として140万円を含む277万1167円を損害として認め、過失相殺後の金額を221万6933円としました。