歩行者が道路を通行するときのルールは?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

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歩行者の道路通行

歩行者は道路の右端を通行しなければなりません。

その他にも道路を通行するときのルールがあります。

歩行者が道路を通行するときのルールや、ルールに違反した歩行者が自転車事故に遭ったときの過失について解説します。

このページで解決するお悩み

  1. 自転車と歩行者の車道での事故の過失割合がわかる
  2. 歩行者が道路を通行するときの義務がわかる

歩行者が道路の右端を通行する義務

歩行者が道路の右端を通行する義務と、それに違反したときの過失について解説します。

歩行者は道路の右端を通行しないと違法なの?

歩行者は、歩道等と車道の区別のない道路では、道路右側端に寄って通行しなければならないとされています(道路交通法10条1項)。

歩行者が道路右端を歩くのは法律上の義務であり、道路右端を歩かないことは違法なのです。

歩道等」とは、「歩道」と「十分な幅員がある路側帯」をいいます。

路側帯」とは、道路交通法2条1項3号の4で「歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によつて区画されたものをいう」と定義されており、歩道のない道路や、歩道のない側の路端寄りに設けられた通行スペースのことです。

このように路側帯は歩道のない道路に設けられたものなので、歩道の横に白線があっても、歩道と白線の間は路側帯ではありません。

道路交通法10条1項では以下のとおり定められています。

歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。

但書にあるとおり、道路の右側端を通行することが危険であるときなどには、道路の左側端に寄って通行することができるともされています。

歩行者は道路右側端に寄って進行しなければならないとされているため、歩行者が道路中央や左端を通行していたことが過失として評価される可能性があります。

歩行者の右側通行義務は、自転車と対向又は同一方向進行歩行者の事故の過失割合で問題となることが多く注意が必要です。

自転車と歩行者の道路左側端での事故

歩行者が道路右端を通行していなかったときの過失

自転車と歩行者の事故で、歩行者が道路の左端を通行していたときは、歩行者の基本の過失割合が5%となります。

同じように、歩行者が道路の端以外の場所を通行していたときは、歩行者の基本の過失割合が10%となります。

歩行者には道路右側端を通行する義務がありますので、右端以外の場所を通行して事故に遭うと、歩行者にも過失があるとされてしまうのです。

ただし、右端を通行することが危険なときなどは、左側を通行することも許されますので、右端以外の場所を通行することで当然に過失とされるわけではありません。

刑事記録を取り寄せて事故状況を把握し、具体的な事故状況を踏まえて反論を行っていくことが重要です。

また、道路工事をしていたことを証明するため、警察で道路の使用許可について情報開示請求をすることも考えられます。

参考となる裁判例

歩行者の道路の通行方法が問題となった裁判例を紹介していきます。

自転車と歩行者(車道上)の裁判例

裁判例①

歩行者に右側通行義務違反等があるとしながら過失相殺を認めませんでした。

右側通行義務違反を理由に過失相殺を主張されている事案で参考になります。

道路右側を歩く歩行者に自転車が正面から衝突した事故

裁判例②

道路の状況から、歩行者が右側を通行せず、自転車が左側を通行しなかったことはやむを得ないとしました。

具体的な事故状況を踏まえた判断が行われたものとして参考になります。

車道で歩行者に自転車が正面から衝突した事故

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歩行者が歩道を通行する義務

歩行者は、歩道等と車道の区別のある道路では、歩道を通行しなければなりません。

道路交通法10条2項では以下のとおり定められています。

歩行者は、歩道等と車道の区別のある道路においては、次の各号に掲げる場合を除き、歩道等を通行しなければならない。

一 車道を横断するとき。

二 道路工事等のため歩道等を通行することができないとき、その他やむを得ないとき。

歩行者が歩道等を通行していなくても、「車道を横断するとき」「道路工事等のため歩道等を通行することができないとき」「その他やむを得ないとき」にあたる場合は道路交通法違反とはなりません。

道路工事を行うときは警察に届出をする必要があるため、道路工事等で歩道が通行できなかったことを立証するために、警察に情報開示請求を行うこともあります。

歩行者の歩道通行義務は、自転車と対向又は同一方向進行歩行者の事故の過失割合で問題となることが多く、歩行者が理由なく車道を通行していた場合には過失相殺が認められる可能性が高いといえます。

歩行者が歩道を通行していなかったときの過失

歩行者が、歩道と車道の区別のある道路で車道を通行していて事故に遭ったときは、歩行者にも過失があるとされてしまいます。

歩行者が車道を歩くことは法律に違反しているので、法律に違反する行為で事故発生の危険を高めたと評価されてしますのです。

歩行者が車道を通行することも許されている場合は10%、車道を通行することが許されていない場合は25%の過失相殺をされてしまいます。

自転車と歩行者の車道での事故

歩道の自転車通行指定部分の通行

歩道では、道路標示により自転車が通行すべき部分が指定されている場合があります。

歩行者には、自動車通行指定部分をできるだけ避けて通行する努力義務があります。

道路交通法10条3項では以下のとおり定められています。

前項の規定により歩道を通行する歩行者は、第六十三条の四第二項に規定する普通自転車通行指定部分があるときは、当該普通自転車通行指定部分をできるだけ避けて通行するように努めなければならない。

歩行者にとって努力義務であり罰則もありませんが、理由なく自転車通行指定部分を通行して自転車と衝突した場合、歩行者の過失として評価される可能性があります。

歩行者が通行していた場所を証明する方法

歩行者が車道の右端を歩いていたことや、歩道を歩いていたことは過失割合に大きな影響を与えます。

それでは、歩行者が歩いていた場所を立証するにはどうしたらよいのでしょうか。

実況見分調書

自転車事故が人身事故になっていれば実況見分調書を入手することができます。

実況見分調書には、立会人が指示説明した事故状況が記録されていますので、これにより歩行者が通行していた場所を立証することが考えられます。

ただし、加害者だけが立会人となっている場合もあり、この場合は被害者の認識と異なる調書となっている可能性もありますので注意が必要です。

防犯カメラ

事故現場に防犯カメラがあれば、防犯カメラの映像で立証することが考えられます。

ただし、防犯カメラの映像の保存期間は短いことや、警察以外への提供を拒否されてしまうこともあることから、実際には簡単にできることではありません。

また、防犯カメラ映像の保存期間は短いため、すでにデータが消去されてしまっているという場合もあります。

防犯カメラ

まとめ

歩行者は、歩道と車道の区別のある道路では歩道を通行しなければならず、車道を通行して事故に遭ったときには過失相殺が行われてしまいます。

歩道と車道の区別のない道路では、道路の右端を通行しなければならず、道路の左端、道路の端以外の場所を通行していると過失相殺が行われます。

自転車事故では、歩いているだけの歩行者にも過失が認められてしまい、損害賠償金が減額されてしまう可能性があるので注意が必要です。

弁護士 髙橋裕也

執筆者

西宮原法律事務所
弁護士 髙橋裕也

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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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