自転車事故の損害賠償として請求できるものは?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

弁護士 髙橋裕也

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損害賠償

自転車事故で怪我をしたときに、損害賠償としてどのような請求ができるかを解説しています。

具体的な損害賠償の請求方法、請求のタイミングについても解説していますので、自転車事故の損害賠償でお悩みの方は参考にしてください。

治療費

治療費にはどのようなものがあるか

自転車事故で怪我をしたときには、損害賠償として治療費の請求をすることができます。

治療費には、診察料、入院料、投薬料、手術料、処置料、柔道整復などの費用があります。

参考:日本損害保険協会、損害保険Q&A

治療費は、必要かつ相当な範囲で認められるとされていますので、治療が長期化したときには一定期間後の治療費が損害として認められるか争いになることもあります。

また、自転車事故で怪我をした場合でも健康保険を使うことができますので、被害者にも過失がある場合などには健康保険を利用して治療を受けましょう。

ただし、業務中や通勤中の事故で労災保険を使用できるときは、健康保険を使用することはできません。

自転車事故での健康保険の利用、労災保険の利用については、「自転車事故では健康保険を使えないの?」「通勤中の自転車事故では労災保険を利用すべき?」で詳しく解説しています。

治療費の請求方法

治療費については、保険会社が病院へ直接支払うこともありますし、被害者が立替え払いをしておき、保険会社に後から支払ってもらうこともあります(⇒自転車事故の治療費はどうやって支払われるの?)。

保険会社に対して領収書を提出しますので、領収書を保管するようにしましょう。

また、高額医療費制度を利用するときは、戻ってきた医療費と二重取りをしてはいけませんので、最終的に負担した金額を請求することになります。

参考:協会けんぽ、高額医療費

保険会社が治療費を支払うときは、病院宛の同意書を提出するよう求められますが、被害者に不利益になる同意書ではないので速やかに提出しましょう。

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治療費を請求するタイミング

治療費を損害賠償として請求するタイミングですが、保険会社が病院に直接支払うときは、被害者から請求する必要はありません。

病院が保険会社へ、診断書、診療報酬明細書という書類を提出し、病院から保険会社へ支払いを求めてくれます。

被害者が立替払いをする場合、保険会社に何日分かの領収書をまとめて送り、保険会社から支払いを受けるのが一般的です。

最終的に示談するときに請求するということでも構いませんが、立替えておくのは負担が大きいので、定期的に請求しておいた方がよいと思います。

また、過失割合で大きな争いがある場合など、保険会社の方から「治療中の支払いではなく、最終的な示談のときに協議させてください」と言われてしまうこともあります。

病院

交通費

自転車事故による通院等で交通費が必要となったときは、損害賠償として交通費を請求することができます。

通院交通費

自転車事故で怪我をして病院に通うときの交通費を請求することができます。

バスや電車代などは、駅と利用区間、通院1回あたりの料金がわかれば、特に証明資料を求められることはありません。

通院日をメモしていなかった場合も、「診療報酬明細書」をみれば通院日を確認できますので、それで計算することになります。

タクシーについては領収書が必要となりますので、捨てずにとっておく必要があります。

タクシーを利用して通院する必要性が求められますので、事前に保険会社に確認しておきましょう。

その他の交通費

通院だけでなく、通学、通勤の交通費についても、事故で怪我をしなければ必要なかった費用については請求することができます。

例えば、自転車で通学、通勤をしていたところ、怪我によりバスや電車を利用しなければいけなくなったケースです。

交通費の請求方法

保険会社から渡される「通院交通費明細書」に、通院日、通院した病院、利用した交通機関、運賃等を記載して提出します。

バス、電車については領収書を求められることはありませんが、自宅から病院までの経路として不自然なときは回答を求められることがあります。

よくあるのが職場からの帰りに通院するケースですが、定期券の範囲から外れて特別の出費になったのであれば、交通費として請求できることになります。

タクシー代については、「自宅から病院まで」「最寄駅から病院まで」といった利用区間を明らかにし、タクシーの領収書の原本を提出します。

自家用車で通院していた場合は、自宅から病院までの距離を申告すれば、機械的に算出したガソリン代が支払われます(ガソリンスタンドのレシートなどは不要です)。

駐車場を利用したときは、駐車場代のレシートを提出します。

交通費を請求するタイミング

自転車事故の損害賠償として交通費を請求するタイミングですが、治療中でも支払いを受けることができます。

保険会社に1月程度の交通費をまとめて請求すれば、最終的な示談を待たずに支払われます。

ただし、タクシー代などが争いになっているときなど、示談のときに慰謝料などと一緒に交渉するという場合もあります。

休業損害

怪我をして仕事を休んだときには、損害賠償として休業損害を請求することができます。

関連するページ

  1. 自転車事故で休業損害を請求する方法は?

給与所得者

サラリーマンが休業損害を請求するときは、職場に休業損害証明書を作成してもらいます。

休業損害証明書には、休んだ日、事故の直近の3か月の給与額などが記載されています。

事故の直近の3か月の給与額から「1日当たりの金額」を計算し、休んだ日をかけて休業損害を算出することになります。

また、有給休暇を取得した日も休んだ日として扱われますので、休業損害を請求することができます。

自営業者

自営業者であれば、前年の確定申告書等を提出し、仕事を休んだことによる損害を休業損害として請求します。

確定申告をしていない場合は、帳簿等の資料で収入を立証していくことになりますが、なかなか大変な作業になります。

主婦

主婦も怪我により家事労働ができなかったことについて休業損害を請求できます。

主婦の休業損害は、女性全年齢平均の平均賃金に基づいて算出されます

被害者が主婦として家族のために家事労働を行っていることが争いになったときは、世帯全員が記載された住民票の提出を求められます。

怪我の内容、程度を踏まえ、休業期間が認められることになります。

請求するタイミング

損害賠償として休業損害を請求するタイミングですが、毎月支払いがないと生活が苦しくなってしまいますので、最終的な示談を待たずに支払いを受けることができます。

自営業者で休業損害の額に争いがあるときなど、最終的な示談のときの請求になることも少なくありません。

主婦の休業損害につきましては、最終的な示談のときに支払われるのが一般的です。

傷害慰謝料

傷害慰謝料とは

自転車事故で怪我をして入院や通院をしたときには、損害賠償として傷害慰謝料を請求することができます。

保険会社が提示する慰謝料は「保険会社基準」で計算されたものなので、これを「裁判基準」で計算して交渉する必要があります。

慰謝料は治療期間に応じて計算されるため、治療日数が慰謝料額に直接影響することはありませんが、治療日数が少ないと減額主張をされることがあるので注意が必要です。

傷害慰謝料の請求方法

保険会社は慰謝料を保険会社基準で提示しますので、これをご自身で裁判基準にするよう交渉するのは極めて困難です。

保険会社は、「裁判基準というのは、裁判をしたときの金額です」という説明を行い、こちらの話しになかなか耳を傾けてくれません。

しかし、弁護士が代理人として交渉することにより、「話し合いで解決しなければ裁判になる」という状況になるため、裁判基準の慰謝料で解決できる可能性があるのです。

大きなお怪我をされたときは、慰謝料を裁判基準で計算することで大きく増額させることがありますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

傷害慰謝料の請求のタイミング

自転車事故の損害賠償として傷害慰謝料を請求するタイミングですが、最終的な示談のときに請求することになります。

治療が終了するまで治療期間が確定せず、傷害慰謝料の金額も確定しないためです。

ただし、治療中に毎月支払う休業損害の額で争いがあるときなど、「慰謝料の内払いの趣旨も含めて」という説明でお金が支払われることがあります。

被害者の生活維持のためにお金は支払うけど、この金額を休業損害として認定したというわけではなく、示談のときに改めて交渉しましょうという趣旨です。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは

後遺障害が認められたときは、損害賠償として後遺障害逸失利益を請求することができます。

これは、事故による後遺障害がなければ得られたはずの利益をいいます。

後遺障害逸失利益の請求方法

保険会社に後遺障害逸失利益を請求するためには、保険会社に後遺障害を認定してもらう必要があります。

自転車事故では自賠責保険がないため、保険会社が自社認定より後遺障害の審査を行うことになります。

保険会社が納得できる後遺障害の認定を行ったときは、収入額を証明するため事故の前年の源泉徴収票等を提出し、後遺障害逸失利益を請求します。

保険会社の後遺障害の判断に納得できないときは、裁判での請求を検討することになります。

自転車事故の逸失利益については、「自転車事故の逸失利益の計算方法は?」で詳しく解説しています。

損害賠償を請求するタイミング

自転車事故の損害賠償として後遺障害逸失利益を請求するタイミングですが、最終的な示談のときに請求することになります。

後遺障害が認められることが前提の請求となりますので、その金額が確定するのは最終的な示談交渉段階となるからです。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは

後遺障害が認められたときには、損害賠償として後遺障害慰謝料を請求することができます。

後遺障害等級に応じて認められる慰謝料ですが、これも保険会社が提示する慰謝料は「保険会社基準」の金額なので、「裁判基準」の金額にして交渉する必要があります。

関連するページ自転車事故で後遺障害を主張するには?

後遺障害慰謝料の請求方法

後遺障害慰謝料の請求については、後遺障害逸失利益と同じように、保険会社が後遺障害を認めるかが問題となります。

また、障害慰謝料と同じように、保険会社は保険会社基準で慰謝料額を提示するため、これを裁判基準で請求する交渉が必要となります。

大きなお怪我をされて後遺障害が考えられる事故では、早めに弁護士に相談した方がよいでしょう。

自転車事故で骨折したときの損害賠償については、「自転車事故で骨折したときの損害賠償請求の流れは?」で詳しく解説しています。

損害賠償請求のタイミング

自転車事故の損害賠償として後遺障害慰謝料を請求するタイミングですが、最終的な示談交渉段階となります。

後遺障害逸失利益と同様に、後遺障害が認められることが前提となる請求だからです。

まとめ

自転車事故による損害賠償については、請求できるはずのものが抜け落ちてしまわないように、示談の前に弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士 髙橋裕也

執筆者

西宮原法律事務所
弁護士 髙橋裕也

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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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