自転車事故でもらえる慰謝料や示談金はいくら?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

弁護士 髙橋裕也

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自転車事故の慰謝料や示談金はいくら?

自転車事故で怪我をすると慰謝料を請求することができますが、慰謝料の相場はいくらなのでしょうか?

自転車事故の慰謝料は怪我や入通院期間によって決まり、骨折による1~10か月の通院期間で27万円~152万円、むちうちによる1~6か月の通院期間で18万円~80万円というのが、裁判基準で計算した慰謝料額の目安とされています。

また、後遺障害が残ったことによる慰謝料も請求でき、後遺障害の重さによって110万円~2800万円が目安とされています。

自転車事故の損害賠償請求の流れについては、自転車事故の示談交渉の進め方は?で詳しく解説しています。

自転車事故の慰謝料にはどのようなものがあるのか?

自転車の交通事故の慰謝料には、傷害慰謝料後遺障害慰謝料死亡慰謝料の3つがあります。

それぞれ、怪我をしたことによる慰謝料、後遺障害が残ったことによる慰謝料、死亡による慰謝料として認められるものです。

傷害慰謝料

傷害慰謝料とは、自転車事故で怪我をしたことによる慰謝料で、入院、通院をすることから入通院慰謝料ということもあります。

自転車事故でも怪我をすれば精神的な苦痛を受けますので、このような慰謝料が認められているのです。

自転車事故で怪我をしたのであれば傷害慰謝料は発生することとなり、自転車事故を交渉により解決するときは、この金額が大きな争いとなります。

後遺障害慰謝料

自転車事故の後遺障害慰謝料とは、大きな怪我をして後遺障害が認められたときの慰謝料です。

後遺障害の重さによって110万円~2800万円を目安にした慰謝料が認められます。

自転車事故で怪我をして後遺障害が認められると、怪我をしたことによる傷害慰謝料と、後遺障害が認められたことによる後遺障害慰謝料を請求することができるのです。

自転車事故で後遺障害慰謝料を請求するときは、①後遺障害が認められるのか、②後遺障害慰謝料はいくらになるのかという、二つの問題が生じることになります。

後遺障害慰謝料については自転車事故で後遺障害が認められたときの慰謝料は?で詳しく解説しています。

死亡慰謝料

自転車事故の死亡慰謝料とは、自転車事故で被害者が亡くなられたときに認められる慰謝料です。

自転車事故で亡くなられた方の相続人が請求することになります。

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自転車事故の慰謝料の3つの基準

自転車の交通事故の慰謝料の基準には、①自賠責基準②任意保険基準③裁判基準(弁護士基準)の3つの基準があり、①自賠責基準が一番低額で、③裁判基準(弁護士基準)が一番高額となります。

保険会社からは、①自賠責基準、②任意保険基準で計算された低額の慰謝料を提示されますので、これを③裁判基準(弁護士基準)まで増額させる交渉が重要なのです

保険会社が①②の基準で計算した慰謝料で示談する必要はありませんし、そのように計算した慰謝料で示談すると損をする可能性があります。

慰謝料の増額

自転車事故の傷害慰謝料を計算する方法は?

自転車事故の裁判基準の傷害慰謝料は、どのような方法で計算するのでしょうか?

慰謝料の算定表というものがあり、これを参考に金額を決めることとされています。

保険会社基準の慰謝料は、保険会社の基準に従い通院日数などに応じて決められ、裁判基準で計算した慰謝料よりも低額となります。

傷害慰謝料の算定表

自転車事故の慰謝料は、入通院期間を算定表の対応する金額を目安に決めるとされています。

大阪地方裁判所の慰謝料の算定表はこちらです。

自転車事故の慰謝料

算定表の縦軸にある通院期間と、横軸にある入院期間を確認し、これが交わるところの金額が裁判基準の慰謝料の目安とされています。

これは骨折などの怪我をした場合の慰謝料で、むち打ち、捻挫、打撲などについては算定表の3分の2程度の金額が慰謝料額とされます。

また、自転車事故で重傷となったときには別の表で計算することになっており(より高額となります)、ここでいう「重傷」とは重度の意識障害が相当期間継続した場合や、骨折や臓器損傷の程度が重大であるか多発した場合等とされています。

入通院期間の考え方は?

慰謝料の算定表では、横軸に入院期間として月数が書かれてあり、縦軸に通院期間として同じく月数が書かれています。

入院期間、通院期間が切りよく1月、2月ということはなかなかありませんが、どのようにして計算するのでしょうか?

慰謝料の算定表では、「30日ある月」「31日ある月」について考慮する必要はなく、1月を30日として計算することになっています。

例えば、通院期間が60日間であれば「通院期間2か月」ですし、通院期間が80日であれば「通院期間2か月と20日」と考え、算定表に当てはめていくのです。

入通院期間

入院期間とされる期間は?

自転車事故で怪我をして入院している期間が入院期間となり、病院の領収書、診断書、診療報酬明細書などで確認することができます。

ただし、入院している期間がそのまま入院期間とされるのではなく、仕事や家庭の都合などで本来よりも期間が短くなったときは増額を検討し、本来は入院の必要性が低いのに入院していた場合には減額を検討するとされています。

また、入院待機中や、ギブス固定中などを入院期間とみることもあります。

通院期間とされる期間は?

自転車事故に遭った日から治療終了(症状固定)までの期間が通院期間とされます。

ただし、通院している期間が当然に「通院期間」とされるわけではなく、治療までの相当な期間が通院期間とされ、①怪我の内容、②症状の推移、③治療経過、④通常の治療期間、⑤事故の状況(衝撃の激しさ)などを考慮して決められます。

ここで治療期間が短く認定されてしまうと、治療費として支払われるお金が減ってしまうだけでなく、通院慰謝料も減ってしまうということ意味します。

慰謝料の具体的な計算方法

慰謝料の計算方法を具体例を示しながら説明していきます。

計算例①

Aさんは、令和6年4月1日に自転車事故でむちうちの怪我をして、令和6年9月27日に症状固定となりました。

①通院期間

令和6年4月1日から令和6年9月27日までは180日ありますので、通院期間は6か月(180日/30日=6)ということになります。

②算定表

慰謝料の算定表の「通院期間6か月」のところは「120万円」とされています。

③修正

むちうちで他覚所見のない神経症状なので、120万円の3分の2である80万円が傷害慰謝料となります。

 

計算例②

Bさんは、令和6年5月1日に自転車事故で大腿骨頸部骨折の怪我をして、令和6年5月30日まで入院し、通院治療を続けて令和6年10月31日に症状固定となりました。

①入院期間の計算

令和6年5月1日から令和6年5月30日までは30日あるので、入院期間は1か月となります。

②通院期間の計算

令和6年5月31日から令和6年10月31日までは154日あるので、通院期間は5か月と4日(154日/30日=5余り4)となります。

③算定表の確認

慰謝料の算定表の「入院期間1か月 通院期間5か月」のところは「145万円」で、「入院期間1か月 通院期間6か月」のところは「153万」です。

通院期間30日の違いで8万円の差額が生じていますので、8万円を30日で割り、4日をかけます。

これを145万円の足すことで、「入院期間1か月 通院期間5か月と4日」の慰謝料を求めることができるのです。

自転車事故の後遺障害慰謝料の基準は?

後遺障害慰謝料の目安

自転車事故の後遺障害慰謝料とは、自転車事故による怪我で後遺障害が残ったときに認められる慰謝料です。

後遺障害が相当する後遺障害等級に応じて、以下の表の金額を目安に認められます。

保険会社は後遺障害慰謝料も保険会社基準で提示するため、これを裁判基準まで増額するよう交渉する必要があります。

また、保険会社によっては、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を合算した金額を示すことがありますので、きちんと慰謝料と後遺障害逸失利益を切り分けて、慰謝料について増額交渉を行う必要があります。

等級1級2級3級4級5級6級7級
慰謝料額2,8002,4002,0001,7001,4401,2201,030
等級8級9級10級11級12級13級14級
慰謝料額830670530400280180110

後遺障害の認定

自転車事故では自賠責保険で後遺障害の認定を受けることができません。

そのため、加害者の保険会社が自社認定を行い、その結果を踏まえた交渉が行うのが一般的な流れとなります。

ただし、被害者が仕事中、通勤中に事故に遭ったのであれば、労災で後遺障害の認定を受け、この結果を尊重した賠償を行うよう求めていくことも考えられます。

また、保険会社の自社認定ということで公平性に疑問を感じることもありますので、保険会社の認定に納得できなければ裁判での解決を検討することになります。

自転車事故で大きな怪我をしたときの損害賠償請求については、自転車事故で骨折したときの損害賠償請求の流れは?で詳しく解説しています。

自転車事故の死亡慰謝料の基準は?

死亡慰謝料とは、被害者が死亡したときに認められる慰謝料です。

以下の金額を基準として計算されます。

一家の支柱2800万円
その他2000万円~2500万円

一家の支柱とは、被害者の世帯が主として被害者の収入によって生活している場合をいい、遺族が経済的支柱を失うことを考慮して高額の慰謝料が認められています。

慰謝料を増額させる交渉はできるの?

慰謝料の増額交渉

保険会社から提示された慰謝料に納得できないときは、弁護士に依頼することで増額できる可能性があります

保険会社から提示された慰謝料は、保険会社基準で計算された低い金額のものなので、これを裁判基準の慰謝料にするよう交渉します。

弁護士が交渉を行えば、「交渉がまとまらなければ裁判になる」という前提での交渉となりますので、保険会社も③裁判基準(弁護士基準)で示談することを真剣に検討するのです。

保険会社は、個人での交渉で裁判基準の慰謝料を認めることはなかなか考えにくいですし、弁護士の交渉でも裁判基準の80%、90%を主張することが増えていますので、粘り強く交渉していくことが必要となります。

保険会社との交渉の流れについては、自転車事故の示談交渉の流れは?で詳しく解説しています。

自転車事故の裁判

保険会社の提示する金額になっとくできないときは、裁判をして賠償金の増額を求めることもできます。

慰謝料についても、裁判では裁判基準によって計算されますので、保険会社から提示された金額よりも増額されることが期待できます。

ただし、裁判になれば保険会社側が通院期間や後遺障害について争うこともあります。

慰謝料の基準が裁判基準になっても、計算の前提となる通院期間(相当な期間)が短くなってしまったり、後遺障害が低い等級になってしまうことで、かえって慰謝料が減ってしまうリスクもあるということに注意が必要です。

慰謝料を増額させるポイントは?

慰謝料を増額させるポイントとしては、裁判基準で計算する、計算方法のおかしなところを指摘する、増額できる事情を主張するといったことが考えられます。

裁判基準での計算

自転車事故の慰謝料には、①自賠責基準、②任意保険基準、③裁判基準(弁護士基準)があり、保険会社の提示する①②で計算した金額を、③で計算することで大きく増額できる可能性があります。

保険会社との慰謝料の増額交渉では、慰謝料を裁判基準で計算するよう求めることが最大のポイントといえます。

通院頻度が少ないときの慰謝料

保険会社が骨折事故で驚くほど低い金額の慰謝料を提示することがあります。

これは、治療期間によって慰謝料を計算するのではなく、通院実日数(実際に病院に行った日数)を基準にして慰謝料を計算したためです。

リハビリを必要としない骨折では、病院に行く日数が少ないこともあるため、打撲、むちうちよりも低額な慰謝料を提示されてしまうことがあるのです。

骨折事案で慰謝料が少ないときは、通院実日数ではなく、通院期間によって慰謝料を計算するよう求めることで、慰謝料が大きく増額される可能性があります。

ギブス固定期間による増額

傷害慰謝料は入通院期間によって決まるところ、入院期間と評価される期間が長いと慰謝料は多くなります。

入院期間については、病院に入院している期間だけでなく、ギブス固定期間も入院期間とする考え方があります。

ギブス固定期間を証明し(診断書に記載があります)、その間の生活状況等を説明することで、ギブス固定期間を入院期間とみて慰謝料が増額される可能性があります。

自転車事故の慰謝料に納得できないときの対処法は?

保険会社から提示された慰謝料に納得できないときは弁護士に相談しましょう。

個人で慰謝料の増額交渉を行っても、保険会社の担当者から「裁判基準の慰謝料は、裁判をしたときの慰謝料ですからね」などと言われてしまい、思うように増額してもらえない実情があります。

弁護士に依頼して裁判基準の慰謝料まで増額するよう交渉するのが第一歩といえます。

弁護士による交渉でも慰謝料の増額が難しいケースや、他にも過失割合などで争いがあるケースでは、裁判を行うことを検討することになります。

まとめ

交通事故の慰謝料には、保険会社の基準と、裁判基準があり、裁判基準で計算することで増額される可能性があります。

保険会社から提示された慰謝料の額に不満があるときは、自転車事故に詳しい弁護士に相談しましょう。

西宮原法律事務所の
顧問医のご紹介

顧問医師

顧問医師
濱口 裕之/はまぐち ひろゆき

西宮原法律事務所の顧問医師を務めている濱口裕之です。交通事故被害者の皆様にお伝えしたいことがあります。後遺障害認定においては、主治医が作成する後遺障害診断書や画像検査、各種検査がとても重要です。しかし、多忙な主治医の中には、後遺症を正確に反映した診断書の作成や、後遺障害を証明するために必要な画像検査や各種検査を積極的に提案してくれないケースも珍しくありません。

私が代表を務めているメディカルコンサルティング合同会社は、西宮原法律事務所から依頼を受けた交通事故被害者の方々を、交通事故に詳しい各科の専門医が作成する画像鑑定や医師意見書などでバックアップしています。

私たちは、西宮原法律事務所と連携して、多くの案件で交通事故被害者の後遺障害を証明してきました。このページをご覧になっている交通事故の被害者の方々が、適正な損害賠償を受けられるように、私たちが全力でサポートいたします。安心して西宮原法律事務所にご相談ください。

資格および所属メディカルコンサルティング合同会社 代表医師 兼 CEO
医学博士
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会脊椎脊髄病医
日本リウマチ学会専門医
日本リハビリテーション医学会認定臨床医
弁護士 髙橋裕也

執筆者

西宮原法律事務所
弁護士 髙橋裕也

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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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