歩道において店舗から出てきた歩行者に自転車が衝突した事故

神戸地方裁判所平成29年3月21日判決(ウエストロー)

事案

歩道上において、店舗から出てきた歩行者自転車が衝突したという、自転車と歩行者の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、類似する事故の過失割合でお悩みの方は参考にしてください。

  • 自転車の歩道通行
  • 歩行者の歩道進入
  • 歩行者に飛び出しが認められるか
自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者0%対自転車100%

歩行者0% 対 自転車100%

裁判所の判断

裁判所は以下のとおり判断して過失相殺を認めませんでした。

「被告車両からみた本件出入口付近の見通しは不良である上、本件店舗がクリーニング店であり、人の出入りが想定される場所であることからすれば、被告としては、本件歩道の中央から車道寄りの部分を進行しながら前方を十分に注視し、本件出入口から歩道上に進出してくる歩行者との衝突を避けるべき義務があったということができ、原告が、本件歩道の中央付近を進行し、衝突するまで原告に気づかなかったことからすれば、被告には、これらの義務を怠った過失がある」

「本件事故は、歩道上において自転車が歩行者に衝突した事故であるところ、上記のような被告の過失の内容を考慮すると、本件では過失相殺をすべきではない。被告は、原告が飛び出してきたと主張するが,上記(1)のとおり、原告が、転倒することなく被告車両のハンドルをつかむことができており、このような事実は、過失相殺において考慮しなければならないような態様の急な飛び出しがあったという事実とは整合しない。被告主張の点を考慮して過失相殺をすべきとはいえない。」

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解説

概要

自転車側から歩行者の急な飛び出しが主張されていましたが、歩行者が自転車のハンドルをつかむことができていること等から、急な飛び出しを認めませんでした。

急に飛び出してきたのなら、そのような余裕はないということです。

基本過失割合について

歩行者が歩道へ進入した事故

自転車と歩行者の事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」で基本過失割合と修正要素が示されています。

歩行者が歩道に進入し、直進自転車が衝突した事故の基本過失割合は、歩行者0%対自転車100%とされています。

基本的には歩行者に過失はないとした上で、何らかの修正要素があるか検討することになります。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

被告には、歩道の中央から車道寄りの部分を進行しながら前方を十分に注視し、出入口から歩道上に進出してくる歩行者との衝突を避けるべき義務があるところ、これを怠ったとされています。

⇒自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

  • 自転車は歩道を通行する際の義務に違反しているとした
  • 歩行者には急な飛び出しは認められないとした

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