歩道上で自転車が歩行者に衝突し、急な飛び出しが争点となった事故

大阪高等裁判所平成29年9月21日判決(ウエストロー)

事案

歩道上店舗から出てきた歩行者自転車が衝突したという、自転車と歩行者の交通事故です。

神戸地方裁判所平成29年3月21日判決の控訴審判決です。

自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者0%対自転車100%

歩行者0% 対 自転車100%

裁判所の判断

裁判所は以下のとおり判断して過失相殺を認めませんでした。

「被告車両は、歩道の中央あたりを走行していたと認められるので、衝突地点も歩道の中央あたりと考えられ、控訴人が店舗から出て、被告車両と衝突するまでの間に、約1.85m移動したことになり、それだけの距離を移動する時間が経過したことが認められる。」

「控訴人は、衝突してきた被告車両のハンドルをつかむことができたというのであるから、控訴人にとって、被告車両を発見してから、衝突するまでの間に、いくらかの余裕があったことが認められ、以上を総合すると、控訴人が急な飛び出しをしたとはいいにくい。」

「本件店舗前にあったのぼりの土台は、本件店舗の軒先の下端より店側にあった上、のぼりの後ろの人物が完全に隠れてしまうわけではないことが認められる。このため、むしろ、被控訴人は、控訴人の動向をよく確認せず、漫然と走行し、衝突に至ったというべきである。」

「仮に、被告車両が歩道の中央から車道寄りと反対側(東側)を走行していたというのであれば、本件店舗から出てきた控訴人が被告車両と衝突するまでの時間や控訴人の移動した距離が僅かであるということができるが、その場合は、被控訴人に、歩道の通行区分についての義務違反があるというべきである(道路交通法63条の4第2項)

「そうすると、本件事故において、過失相殺をすべきであるとは認められない。」

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解説

概要

歩行者には急な飛び出しは認められないとし、仮に飛び出しが認められるなら自転車には通行区分違反が認められるとし、いずれにせよ過失相殺を行うべきではないと判断しました。

歩行者が店舗から急に飛び出してきて避けようがなかったというのなら、自転車は店舗寄りを走行していたことになるから、結局は自転車の過失が大きいということです。

自転車が歩道の中央より車道寄りを走行していて、なおかつ歩行者の急な飛び出しが認められるというのは、歩行者がよっぽど危険な動きをした場合に限定されると考えられます。

基本過失割合について

歩行者が歩道へ進入した事故

自転車と歩行者の事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」で基本過失割合と修正要素が示されています。

歩行者が歩道に進入し、直進自転車が衝突した事故の基本過失割合は、歩行者0%対自転車100%とされています。

歩行者が最優先される歩道においては、基本的に歩行者に過失を認めないとするものです。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

被告の自転車が歩道の中央から車道寄りを走行していれば衝突回避が容易であったし、走行していなければ通行区分についての義務違反があるとして、いずれにせよ被告の過失は重いとしました。

⇒自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

  • 歩行者の移動距離等を踏まえると急な飛び出しは認められてないとした
  • 仮に急な飛び出しが認められるとすると、自転車には歩道の通行区分違反が認められることになるから過失が大きいとした

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