12歳男子の自転車加害事故で両親に民法709条責任を認めた裁判例

東京地裁平成22年9月14日判決(自保ジャーナル1836号)

事案

交差点において自転車同士が衝突した、自転車同士の交通事故です。

その他

裁判所の判断

加害自転車を運転していた者が12歳であったため、両親について民法709条責任が認められるか争いとなったところ、裁判所は以下のとおり判断しました。

「証拠(略)によれば、被告三郎及び被告春子は、被告次郎に対し、自転車の運転について注意するよう口頭での指導はしており、親子で自転車で外出した際に被告次郎が危険な運転をしたようなことはなかったし、自転車(補助輪のないもの)に乗るようになった小学1年生からこれまでの6年間、自転車で事故を起こしたことや、その他、交通法規違反など、問題のあるような自転車の運転をしたために、両親からしかられたり、警察や学校から注意を受けるということもなかったことが認められるが、被告三郎及び被告春子は、被告次郎が塾の行き帰りに自転車を利用しており、帰宅時は夜間となること、その経路には本件交差点を含め住宅街の中の狭あいな道路からなる信号機による交通整理の行われていない交差点をいくつも通過し、見通しの悪いものも多く含まれていることは当然認識していたと認められる。

一般に、夜間における自転車の運転には昼間に比べてより一層の注意力と慎重さが必要となるが、特に、本件では、被告次郎の帰宅経路に本件交差点を含め住宅街の中の狭あいな道路からなる信号機による交通整理の行われていない交差点をいくつも通過し、見通しの悪いものも多く含まれていることに鑑みると、被告次郎が夜間に塾から自転車を利用して帰宅することを認識していた被告三郎及び被告春子としては、被告次郎に対して自転車の運転について注意するよう口頭で指導をするに止まらず、被告次郎が塾から帰宅するのにどのような走行経路をたどっているのか、その間にどのようにして自転車を運転しているのかといったことについて具体的に把握をした上、被告次郎が危険な自転車の運転をしないよう、塾から自宅までの走行経路、その間における自転車の運転方法等を具体的に指導すべきであったというべきであるところ、上記認定のとおり、被告次郎は、当時、塾帰りに自転車で帰宅する友人らと「鬼ごっこ」をしながら帰宅することが多く、本件事故の際に「鬼ごっこ」中であったため、通常よりも速い速度で走行していたにもかかわらず、被告三郎及び被告春子は、被告次郎が塾帰りに「鬼ごっこ」をしていたことは把握していなかったというのであるし、ライトを点灯すること、なるべく明るい道を使用すること、交差点では一時停止することといった一般的な注意は与えていたようであるが、被告次郎が夜間に塾から帰宅する際にどのように自転車を運転しているのかを具体的に把握しようとしていた形跡はないことからすると、被告三郎及び被告春子には、被告次郎が自転車の運転に際し交通法規を遵守するよう教育監督すべき義務に違反したと認められ、民法709条の責任を負う。」

電話での簡単なご質問にも対応!お気軽にご相談ください
お電話で無料相談
LINEで無料相談

解説

自転車を運転した子どもに責任能力がある場合、子どもの親に民法714条1項の責任を追及することはできないので、民法709条の責任を追及することができないかが問題となります。

裁判所は、具体的な事実を指摘して民法709条の責任を認めており、同種の事案で主張、立証をするのに参考となる裁判例です。

⇒自転車同士の事故については自転車同士の事故の過失割合で解説しています。

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、入通院慰謝料140万円を含む815万円を損害として認め、過失相殺後の金額を489万3074円としました。