自転車同士の事故で後遺障害等級の併合について判断した裁判例

大阪地裁平成23年2月22日判決(自保ジャーナル1873号)

事案

横断歩道を横断する対向自転車が衝突した、自転車同士の交通事故です。

自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車35%対自転車65%

自転車35% 対 自転車65%

裁判所の判断

裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

「①本件事故は、横断歩道上での自転車同士の衝突事故であること、②被告は、原告自転車の存在を認めながらも動静に注意を全く払っていなかったと評価できること、③原告自転車の走行速度はかなり低速であったこと、④原告も、被告自転車が右前方から対向進行してくることを認識していたのであるから、その動静に注意を払うべきところ、それを怠っていた過失もそれほど軽くはないこと等の諸点を指摘できるところ、これらの諸事情を総合勘案すると、本件事故おける過失割合は、原告が35%、被告が65%とするのが相当である。」

裁判所は、対向自転車の衝突事故ではあるが、原告自転車の速度がかなり低速であったことなどから、上記のとおり判断したものです。

また、裁判所は、後遺障害等級の併合について以下のとおり判断しました。

「原告の後遺障害の程度につき、併合9級相当とする労災保険審査会の決定が出ている。

しかしながら、その内容は、原告の右眼の視力が0.1以下に低下したことと、右眼の視野欠損が60%と認められるということであるところ、この後遺障害(視力障害、視野障害)は右眼に同時に発現しているから、自賠責保険実務上、同一系列の後遺障害として取り扱うこととされているから、自賠法施行令上の併合(自賠法施行令2条1項3号)は適用されないと解される。本件事故は自転車同士の衝突事故であって自賠法の適用外ではあるものの、いわゆる交通事故である以上、少なくとも後遺障害の評価においては自賠法(自賠法施行令を含む。)及び自賠責保険実務と同一の取扱いをするのが相当であることに鑑みると、後遺障害認定等級は、上位等級である自賠法施行令別表第二記載の10級に相当すると評価することになる。そうすると、本件事故による原告の労働能力喪失率は27%と解するのが相当である。」

裁判所は、自転車同士の事故で自賠法の適用外ではあるが、後遺障害の評価においては自賠法、自賠責保険実務と同一の取扱いをするのが相当であるとしたものです。

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解説

自転車の速度について

自転車の一般的な速度は時速約15㎞とされ、自転車が徐行する速度(直ちに停止できるような速度)は時速6~8㎞と考えれています。

本件では原告自転車の走行速度がかなり低速度であったことを考慮しています。

⇒自転車の速度については自転車事故で問題となる自転車の速度は?で解説しています。