自転車事故で後遺障害が認められたときに、後遺障害逸失利益を計算する方法を解説していきます。
自転車の交通事故で重大な怪我をしたときには、後遺障害逸失利益が大きな金額となることもありますので、きちんと計算をしないと適正な賠償を受けられない可能性があります。
このページで解決するお悩み
- 自転車事故の逸失利益の計算方法がわかる
- 逸失利益の計算で必要な資料がわかる
自転車事故の後遺障害逸失利益とは?
自転車事故で大きな怪我をしてしまい、後遺障害が残ると、仕事をする能力が低下してしまいます。
被害者の仕事をする能力が低下し、将来の収入が減少してしまう損害のことを、後遺障害逸失利益というのです。
後遺障害については、労災の基準に従って判断するものとされています。
参考⇒厚生労働省「後遺障害の認定基準」
自転車事故で仕事ができなくなると休業損害を請求することができますが、仕事ができないことによる損害ということで、後遺障害逸失利益と同じような性質のお金といえます。
自転車事故で大きな怪我をしたときは、治療中は休業損害を請求し、症状固定後は後遺障害逸失利益を請求するという関係にあります。
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後遺障害逸失利益の計算方法は?
逸失利益の計算方法は以下のとおりです。
①基礎収入額を確認する
②労働能力喪失率を確認する
③労働能力喪失期間を確認する
④「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(ライプニッツ係数)」の計算を行う
基礎収入額とは?
基礎収入とは被害者が事故に遭わなければ稼いでいた収入額のことで、事故前年の収入額を基礎収入とするのが一般的です。
給与所得者
給与所得者は、事故の前年の源泉徴収票の「支払金額」の欄の金額が基礎収入額となります。
源泉徴収票にある「給与所得控除後の金額」ではないので注意が必要です。
将来の昇給については会社の規定などで明確であれば考慮されますし、事故後に昇給しているのであれば昇給後の給与額が基礎収入額となります。
事業所得者
事業所得者は、確定申告書で基礎収入額を確認します。
確定申告書の所得金額に青色申告特別控除を加えた額が基礎収入額とされます。
事業所得者の収入については、事故の前年の収入を主張するだけで十分か検討が必要な場合があります。
例えば、事故の前年は極端に売上げが低下していた場合など、その他の事情を踏まえた金額が認定されることもあります。
学生、幼児等
自転車事故の被害者が、学生、幼児等の場合、原則として賃金センサスの学歴計・全年齢平均賃金額を基準に、基礎収入を認定します。
被害者が大学在学中など、大卒となる蓋然性が高いときは、大卒の平均賃金を認めます。
若年労働者
若年の労働者(おおむね30歳未満)については、現在の収入を基礎収入としてしまうと、将来の給与の上昇を全く考慮せずに逸失利益を認定することになってしまいます。
そこで、若年労働者については全年齢の平均賃金を基礎収入とするのが原則とされています。
ただし、被害者の現在の収入が、同年代の平均的な収入と大きく乖離している場合には、そうした状況を考慮した認定が行われることもあります。
労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺障害により労働能力が低下した程度を数値にしたものです。
後遺障害等級に応じて一応の基準が定まっていますが、後遺障害の内容や職業によって、労働能力喪失率が争いになることがあります。
労働能力喪失期間
労働能力喪失期間とは、労働能力の喪失による収入減が続く期間のことです。
労働能力喪失期間は、原則として症状固定時から67歳までとされています。
後遺障害逸失利益の計算では、労働能力喪失期間を年数のままかけ算するのではありません。
何年も後に支払われるはずの収入について、「後遺障害逸失利益」として支払いを受けることになるため、その間の利息を控除する必要があるのです。
このような中間利息を控除するために用いるのが「ライプニッツ係数」というもので、労働能力喪失期間に対応したライプニッツ計算を用いて逸失利益を計算していきます。
被害者に減収がないとき
被害者に大きな後遺障害が認められても、仕事を続けることはできているため減収がないということは少なくありません。
保険会社は、減収がないときに「減収がないのだから、後遺障害逸失利益は認められない」と主張することがあります。
この主張に対しては、以下の事情を丁寧に主張して反論していくことになります。
①本人の特別の努力
本人が特別の努力をすることで、減収せずに済んでいると主張するものです。
②勤務先の配慮、周囲の協力
勤務先が特別の配慮をしているときは、これが長期間にわたり継続するとも限らないといえます。
③後遺障害の程度
後遺障害の程度が重ければ、仕事への影響も大きいといえ、収入の維持についても本人の特別の努力が大きいという評価につながります。
④業務への支障の程度
被害者の業務内容を詳しく主張し、後遺障害によりどのような支障が生じているか具体的に主張します。
⑤昇進への不利益
減収がなくても、本来であれば昇進できたはずの機会を失えば損害といえます。
⑥転職の可能性
転職の可能性がある職場、業種であれば、転職の場面で労働能力の低下が大きな問題となります。
まとめ
自転車事故の逸失利益を請求するには、後遺障害が認められるか、基礎収入はいくらなのか、労働能力喪失率をどうみるのか、労働能力喪失期間は何年かといった多くの争点があります。
大きなお怪我をされたときには、示談の前に弁護士に相談することをお勧めします。
西宮原法律事務所の
顧問医のご紹介
顧問医師
濱口 裕之/はまぐち ひろゆき
西宮原法律事務所の顧問医師を務めている濱口裕之です。交通事故被害者の皆様にお伝えしたいことがあります。後遺障害認定においては、主治医が作成する後遺障害診断書や画像検査、各種検査がとても重要です。しかし、多忙な主治医の中には、後遺症を正確に反映した診断書の作成や、後遺障害を証明するために必要な画像検査や各種検査を積極的に提案してくれないケースも珍しくありません。
私が代表を務めているメディカルコンサルティング合同会社は、西宮原法律事務所から依頼を受けた交通事故被害者の方々を、交通事故に詳しい各科の専門医が作成する画像鑑定や医師意見書などでバックアップしています。
私たちは、西宮原法律事務所と連携して、多くの案件で交通事故被害者の後遺障害を証明してきました。このページをご覧になっている交通事故の被害者の方々が、適正な損害賠償を受けられるように、私たちが全力でサポートいたします。安心して西宮原法律事務所にご相談ください。
資格および所属 | メディカルコンサルティング合同会社 代表医師 兼 CEO 医学博士 日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会脊椎脊髄病医 日本リウマチ学会専門医 日本リハビリテーション医学会認定臨床医 |
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