自転車同士の正面衝突事故でスマホを操作していた事故

大阪地裁平成30年3月22日判決(ウエストロー)

事案

自転車と自転車が、歩道において正面から衝突したという、自転車対自転車の交通事故です。

以下の事情が考慮されているので、類似する事故でお悩みの方は参考にしてください。

  • 自転車同士の正面衝突
  • 自転車同士の歩道上の事故
  • 自転車をスマホを使用しながら運転
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車30%対自転車70%

自転車30% 対 自転車70%

裁判所の判断

裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

原告及び被告は、それぞれ、普通自転車を運転して本件歩道の普通自転車通行指定部分を走行するに際し、前方を注視し、同部分の状況に応じた安全な速度と方法で通行すべき注意義務を負っていたところ、原告においては、スマートフォンを操作しながら、前方注視を怠った状態で、漫然と時速約15キロメートルで原告車両を走行させた過失があることは明らかであり、また、被告においても、前方約44.3メートルの地点に対向進行してくる原告車両を認め、かつ、原告がスマートフォンを操作しながら原告車両を運転していることに気付いていたにもかかわらず、原告車両の動静を注視してそれに応じて被告車両を進行させるのではなく、自転車は左側を走行すべきとの考えで安易に被告車両の進路を左に寄せた上、原告車両との距離が約11.3メートルに近づくまで、被告車両の速度を減速させることもなく、漫然と時速約15キロメートルで走行した点において、過失があるというべきである。そして、本件事故は、上記の両者の過失が相まって発生したものと認められるところ、スマートフォンを操作しながら自転車(原告車両)を運転していた原告の過失は著しいというべきであるから、本件事故の過失割合は、原告70パーセント、被告30パーセントと認めるのが相当である。
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解説

概要

自転車で歩道を通行していますが、両自転車とも普通自転車通行指定部分を通行しているため問題とはされていません。

スマートフォンを操作していたことが前方不注視と評価されたのは当然と考えられ、これが大きな過失として評価されています。

一方で、相手方につきましても、対向車がスマートフォンを操作しているのを認識しながら、速度を落とすなどして適切な回避措置をとっていなかったことを理由に30%の過失が認められたものです。

基本過失割合

自転車同士の歩道上の事故

自転車事故の過失割合は「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本下巻 日弁連交通事故相談センター )というものを参考にし、過失割合について検討していくことが考えられます。

自転車同士の歩道上の事故の基本過失割合は自転車50%対自転車50%とされています。

正面衝突事故であれば、基本的には同程度の過失であるという考えがスタートラインとなります。

自転車の歩道の通行

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行できるときでも、道路交通法63条の4第2項で決められた、歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

本件でも、安全に走行する義務について重視しています。

自転車の歩道通行については⇒自転車は歩道を通行できるのか?

自転車のスマホの使用

スマホを使用しながら自転車の運転をすることは違法です。

大阪府警察の説明を引用します。

次のような行為をしながらの運転は、注意が散漫になったり、安定を失うおそれがあるなど大変危険なので絶対にやめましょう!

道路交通法第71条第6号
大阪府道路交通規則第13条
罰則:5万円以下の罰金

・携帯電話を手で保持して通話をしたり、メールをしながら自転車を運転しないこと。

引用元:大阪府警察

本件でも、自転車同士の正面衝突ですが、スマホを使用していたことを重視して加害者の過失を重いとみています。

自転車のスマホ使用は⇒スマホを操作しながら自転車に乗ってもいいの?

  • スマホを操作しながら自転車を運転した過失は著しいと評価できる
  • そのような対向自転車を発見したにも関わらず、その動静を注視して減速しなかったことは過失となる
  • 自転車同士の正面衝突事故ではあるが、スマホ操作を重視して50%対50%から大きく修正したものと考えられる

類似の裁判例

裁判例①

自転車のスマホ運転が共通しており参考になります。

自転車で下り坂を無灯火、携帯電話を操作しながら対向歩行者に衝突した事故

その他の裁判例は

自転車事故の過失割合の裁判例

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、傷害慰謝料30万円を含む31万7160円を損害と認め、過失相殺後の22万2012円の請求を認めました。

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