追い抜き後の右折により自転車同士が衝突した事故

名古屋地方裁判所平成29年1月27日判決(自保ジャーナル1996号)

事案

同一方向に走行する自転車同士の事故であり、後行する自転車が先行する自転車を追い抜き、右折をするためハンドルを右に切ったところ、先行していた自転車の進路を塞ぐ状態となってしまい両車が衝突したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、類似の事故で参考にしてください。

  • 自転車同士の追い抜きでの事故
  • 追い抜き後の進路変更で進路を塞いだ
  • 脇見運転の有無
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車0%対自転車100%

自転車0% 対 自転車100%

裁判所の判断

裁判所は以下のとおり判断して過失相殺を認めませんでした。

「被告は、原告自転車を追い抜き、さらに、その先の交差点を鋭角に右折するため、少し直進して、右折先の道路の真ん中辺りで深くハンドルを切って右折を開始したが、右折先の家の塀に当たりそうになったため、さらに深くハンドルを切ったところ、被告自転車が原告自転車の進行を塞ぐ格好になったことが認められる。したがって、被告は、原告自転車の進路前方でハンドル操作を誤り、進路を妨害することとなったものであるから、本件事故発生の主要な原因は、被告にあるものというべきである。」

「一方、原告自転車の速度、追い抜き地点から右折開始地点までの正確な距離等は明らかではなく、原告がわき見運転をするなどの過失があったことを認めるに足りる証拠はない(前記のとおり、原告は、事故の状況を正確に供述できていないが、衝突時の瞬間的な出来事であり、そのことから直ちに前方不注視であったとはいえない。)」

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解説

概要

前方自転車は後続自転車に追い抜かれ。その直後に進路を塞がれてしまったという事故状況から、前方自転車に過失を認めませんでした。

後方から来た自転車にこのように走行されてしまうと、前方自転車は衝突を回避することはできませんし、こうした自転車の存在を予見する義務もないからです。

後方確認義務について

自転車は後続車の速度や方向を急に変更させるおそれがあるような進路変更はしてはならないとされています(道路交通法26条の2第2項)。

被告は後方を十分に確認せずに進行方向を変更し、原告の進路を塞いでしまったことが大きな過失とされています。

⇒自転車の後方確認義務については自転車が後続車との関係で注意すべきことは?で解説しています。

  • 追抜き自転車が深くハンドルを切り、後続自転車の進路を塞いだことにつき大きな過失を認めた
  • 後続自転車にはわき見運転などの過失は認められないとした

類似の裁判例

裁判例①

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裁判例⑤

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裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、通院慰謝料152万円を含む241万2486円を損害として認め、過失相殺を行いませんでした。

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