交差点で左折後の自転車が一時停止自転車と衝突した事故の裁判例
令和2年11月20日大阪地裁判決(自保ジャーナル2086号)
事案
自転車が十字路交差点の手前で一時停止してから交差点に進入しようとしたところ、同交差点で一時停止せずに左折してきた自転車に衝突されたという、自転車同士の交通事故です。
以下の事情が考慮されています。
- 交差点における一時停止
- 交差点左折後の事故
- 道路右側の通行
過失割合
自転車0% 対 自転車100%
裁判所の判断
裁判所は、双方とも一時停止の規制がある交差点において、直進しようとした自転車は一時停止したのに対し、左折自転車は一時停止せず、カーブミラーによる安全確認も行わずに左折進行して衝突したことから、左折自転車の一方的な過失による事故であるとして、直進自転車に過失を認めませんでした。
直進自転車は道路右側を走行していたのですが、道路幅が2mであり左側通行が厳格に求められるとはいえないこと、仮に左側にいても衝突を回避できたとはいえないとして、右側通行も過失相殺を行うべき過失であるとはしませんでした。
解説
概要
自転車同士の交差点での事故で過失割合が0対100となるのは珍しいのですが、交差点における事故(交差点内の事故)というよりも、左折自転車が左折後にさらに進行し、一時停止した自転車に衝突したという事故状況を踏まえたものと考えられます。
自転車の一時停止について
自転車も一時停止の標識に従う義務があり、一時停止を行わないと大きな過失とされてしまいます。
本件でも一時停止せず、カーブミラーによる安全確認も行わなかったことが重視されています。
事故の相手方の一時停止義務違反については、刑事記録によって立証することが考えられます。
実況見分調書を入手し、相手方が一時停止したと指示説明していなければ、裁判所は一時停止していなかったと認定してくれる可能性が高いといえます。
参考ページ
自転車の左側通行義務
自転車も車両として車道の左側を通行する義務があります。
本件では道路幅が狭いことや、左側を通行していても衝突を回避できたとはいえないことを理由に、右側通行を重視しない判断を行っています。
参考ページ
類似の裁判例
裁判例①
見通しのきかない交差点での衝突事故で一方に大きな過失を認めたものです。
裁判例②
一時停止違反の左折自転車と直進自転車が交差点内で衝突した事故です。
裁判例③
一時停止のある交差点の事故で、一方に大きな過失を認めた事故です。
裁判例④
自転車同士の事故で一時停止違反が考慮されたものです。