歩道上で信号待ちの自転車が、歩道内で前進し前方通過自転車と衝突した事故

さいたま地裁平成23年10月5日判決(自保ジャーナル1868号)

事案

信号待ちの自転車が歩道上で停車し、車両用信号機が青から黄になったため歩道内で前進したところ、歩道上を走行し同車の前方を通過しようとした自転車と衝突したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、類似の事故で参考にしてください。

  • 自転車の歩道における徐行義務
  • 自転車が歩道において発進する際の注意義務
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車10%対自転車90%

自転車10% 対 自転車90%

裁判所の判断

裁判所は、信号待ち自転車の前方を通過しようとした自転車の責任について、以下のとおり判断しました。

「軽車両である自転車(道路交通法2条1項11号)は、本件自転車歩行者道では原則徐行しなければならない上、本件交差点付近は下り坂で湾曲しており、さらに、原告自転車停車位置までの約6メートルの間には、本件自転車歩行者上横断歩道があるにもかかわらず、被告が、車両用信号機が青色から黄色に変わったことを約6メートルも手前で確認しながら、歩行者用信号機が青色に変わる前に原告の前方を通過することが可能であると判断したことは、軽率であるといわざるを得ず、被告は、原告自転車の前方を通過するに当たっては、原告自転車の動向に、より注意を払う必要があったのにこれを怠った過失があるものといえる。あるいは、被告が約6メートルも手前で車両用信号機が青色から黄色に変わったことを確認しながら、原告自転車の前方を通過することが可能であると判断したのは、被告が自転車歩行者道での安全性に配慮せず、相当に速い速度で原告の前方を通過するつもりでいたとも推認され、その場合、被告は、本件自転車歩行者道及び本件自転車歩行者道上横断歩道において、安全に停車できる程度に十分な減速をせず、すぐに停止できるような速度での運転をしていなかった過失があるものと考えられ、いずれにしろ、被告には、本件事故発生について責任がある。」

裁判所は、両車の過失割合について以下のとおり判断しました。

「被告には本件事故について責任が認められるが、原告が主張するように、本件において、原告が、歩行者用信号機が青色になって発進したのであったとしても、信号待ちの後、自転車を発進させて本件自転車歩行者道内を移動する際には、本件自転車歩行者道を通行する人や自転車に注意して、安全に発進すべき義務があるというべきであり、原告はこれを怠り、左方の被告自転車の動勢に注意しなかったことが認められ、原告にも、本件事故について過失が認められる。そうすると、原告に生じた損害の負担について、過失相殺をすべきであるが、前記(1)のとおり、被告が減速を怠り漫然と運転して事故を起こした責任は重大であること及び本件に顕れた一切の事実を併せ考慮すれば、原告と被告の過失の割合は、原告10、被告90とすることが相当である。」
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解説

概要

裁判所は、車両用信号機が青から黄に変わったことを約6メートルも手前で確認しながら、歩行者用信号機が青に変わる前に前方を通過することが可能であると判断したことについて、軽率であると評価し、その過失は重いと判断したものです。

自転車の速度について

自転車の一般的な速度は時速約15㎞とされ、自転車が徐行する速度(直ちに停止できるような速度)は時速6~8㎞と考えれています。

過失割合の判断において高速度走行が考慮されました。

⇒自転車の速度については自転車事故で問題となる自転車の速度は?で解説しています。

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