突き当たり路で右折した自転車と直進自転車が衝突した事故の裁判例
令和2年6月17日東京地裁判決(自保ジャーナル2077号)
事案
自転車が突き当たり路を走行し丁字路交差点を右折したところ、右方から直進してきた自転車と衝突したという、自転車同士の交通事故です。
以下の事情が考慮されています。
- 見通しの悪い交差点
- 丁字路交差点での事故
- 道路右側の走行
- 高齢者修正
過失割合
自転車50% 対 自転車50%
裁判所の判断
裁判所は、丁字路交差点を右折進行した自転車について、交差点で右折するにあたり、見通しの悪い交差点であるのに歩行者や自転車等の有無を十分に確認せず、道路右側を走行して交差点に進入した過失があるとしました。
直進自転車についても、やはり交差点へ直進するにあたり、見通しの悪い交差点であるのに安全確認が不十分であるとしました。
その上で、丁字路交差点を右折した自転車の運転者が高齢者であることを考慮し、50%対50%の過失と判断しました。
解説
概要
自転車の丁字路交差点における事故なので、右折した側の過失が大きいとされるのが一般的な考え方です。
交差点で右左折するときは、交差点を直進するときよりも高度の注意義務が認められるためです。
本件では、高齢者であることを考慮して50%対50%と判断していますので、高齢者でなければ右折した側の過失が大きいと判断したといえます。
基本過失割合
自転車事故の過失割合は「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本下巻 日弁連交通事故相談センター )というものを参考にし、過失割合について検討していくことが考えられます。
丁字路交差点の右折自転車と直進自転車の事故については、基本過失割合が直進自転車40%対右折自転車60%とされています。
関連するページ
高齢者修正
被害者が高齢者であるときは、高齢者保護の趣旨で過失割合を小さくする修正が行われます。
高齢者というのは概ね65歳以上の者とされています。
これは高齢者の注意義務を軽いと考えるわけではなく、あくまで「高齢者保護」の観点からの修正であるため、高齢者が加害者であるときに責任を軽減する趣旨で行われる修正ではありません。
類似の裁判例
裁判例①
丁字路交差点で右折自転車と左折自転車が衝突した事故です。
直進自転車との事故ではありませんが、丁字路交差点における事故として参考になります。
⇒丁字路において右折自転車と左折自転車が出合い頭に衝突した事故
裁判例②
丁字路交差点で右折自転車と直進自転車が衝突した事故です。
直進自転車側の道路が広路であることも考慮されています。
裁判例③
丁字路交差点ではありませんが、見通しの悪い交差点で右折自転車と直進自転車が衝突した事故です。
⇒直進自転車と右折自転車が見通しのよくない交差点で衝突した事故
裁判例④
丁字路交差点で右折自転車と直進自転車が衝突した事故で、本件と類似した事故状況です。