自転車事故において自己破産した加害者の免責主張を認めなかった裁判例

東京地裁平成28年11月30日判決(自保ジャーナル1990号)

事案

夜間歩道上において、無灯火、かつ、時速25㎞~30㎞で走行する自転車が、歩行者に正面から衝突したという、自転車と歩行者の交通事故です。

自転車を運転していた加害者は、事件後に自己破産を行い免責決定も受けています。

当事者の主張

加害者は自己破産したことを踏まえ以下のとおり主張しました。

「被告は、本件事故後、破産手続開始決定を受けたうえ、本件免責許可決定を受けたから、原告の被告に対する本件事故による損害賠償請求権は免責された。

破産法253条1項3号にいう重大な過失は、主観的態様において故意と同視すべき非難可能性が極めて高いものをいうと考えられるところ、本件事故のように、道路上を単独で異常とはいい難い速度で走行するような場合は、これに該当しないから、前記損害賠償請求権は非免責債権ではない。」

裁判所の判断

裁判所は、加害者の免責主張に対し、以下のとおり判断し免責を認めませんでした。

重過失とは、一般に、故意に比肩する程度に重い過失であると解されており、被告の理解は概ねこれを容れうるものと解されるが、前記1において認めたとおり、被告は、本件事故当時、被告車である自転車を、薄暗い自転車の通行可能な歩行者優先歩道上を、時速約25kmから30kmという原動機付自転車の法定最高速度程度の危険な速度で走行させつつ、無灯火の上、進路前方左右の歩行者等の有無及びその安全の確認を懈怠していたものであるから、本件事故に係る被告の過失は、故意に比肩する程度に重い過失であって、被告の理解を前提としても、重過失と認めるのが相当である。

したがって、本件事故により生じた原告の被告に対する損害賠償請求権が、本件免責許可決定に基づき免責されることはない。」

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解説

自転車保険に加入することの重要さがわかる裁判例です。

加害者が破産したため、加害者に対する損害賠償請求権が非免責債権に当たるかが争いになりました。

非免責債権に当たると、加害者は破産したにも関わらず被害者にお金を払わないといけないいけないのです。

裁判所は、加害者に重大な過失があるときに非免責債権になり、重大な過失とは故意と同視できる程度に重い過失であるとしました。

その上で、自転車が歩道を時速約25kmから30km(原動機付自転車の法定最高速度程度)という危険な速度で走行していたこと、薄暗い道を無灯火で走行していたこと、進路前方左右の歩行者等の有無及びその安全の確認を怠ったことなどから、重大な過失があると認めました。

⇒自転車の保険加入義務については自転車保険の加入義務化とは?で解説しています。

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、通院慰謝料100万円、後遺障害慰謝料110万円を含む損害を認め、損害填補後の金額を180万7249円としました。