自転車同士の出会い頭の衝突事故で、一方が高速度で直進していた事故

大阪地方裁判所平成29年1月31日判決(ウエストロー)

事案

マンション敷地内通路での出会い頭の衝突事故であり、原告自転車が右折進行し、被告自転車が直進進行していたという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので参考にしてください。

  • 右折自転車と直進自転車の事故
  • 一時停止の看板
  • 自転車の高速度での走行
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車40%対自転車60%

自転車40% 対 自転車60%

裁判所の判断

裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

「被告は、②地点よりも手前で原告車が東西通路から本件通路に右折進入してくるのを認識するとともに、本件通路を北進して東西通路に接近する際には本件看板2が示すとおり同通路手前で一時停止することのできるような速度で走行すべきところ、これらをいずれも怠った過失が認められる。したがって、被告は、民法709条に基づき、本件事故により原告に生じた損害を賠償する責任を負う。
もっとも、本件事故については、原告にも、東西通路から本件通路に右折進入するに際して本件看板1が指示する一時停止を怠った過失が認められる。」「本件事故は,東西通路を東進して本件通路に右折進入した原告車と本件通路を北進してきた被告車が出合い頭に衝突した事故であるが、上記(3)の原告と被告の過失の内容・程度に加え、本件事故直前の被告車の速度が原告車の速度を相当程度上回っていたことを考慮すると、被告の損害賠償額を算定するに際して40パーセントの過失相殺を認めるのが相当である。」
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解説

概要

交差点の右折自転車と直進自転車の衝突事故です。

一時停止については道路標識によるものではありませんが、一時停止の看板に従わなかったことを過失と評価しています。

直進側が高速度であったことも考慮し、直進側を40%、右折側を60%の過失割合としました。

自転車の一時停止について

自転車も一時停止の指定のある交差点では一時停止をする義務があります。

また、道路交通法上の一時停止の義務がない交差点であっても、一時停止の看板やペイントがあることが、過失割合において考慮されることがあります。

原告、被告とも、交差点手前に一時停止を示す看板があったことが考慮されています。

⇒自転車の一時停止については自転車も交差点で一時停止の必要があるの?で解説しています。

自転車の速度について

自転車の一般的な速度は時速約15㎞とされ、自転車が徐行する速度(直ちに停止できるような速度)は時速6~8㎞と考えれています。

過失割合の判断において自転車の速度についても考慮されました。

自転車の速度を証明する方法については、実況見分調書から両自転車の移動距離を比較したり、供述調書を入手できる事故であれば、高速度走行を認める供述などに基づいて立証していくことになります。

⇒自転車の速度については自転車事故で問題となる自転車の速度は?で解説しています。

  • 一時停止を表示する看板に従わなかったことを過失と評価した
  • 自転車の速度差が大きかったことを理由に過失に差を生じさせた

類似の裁判例

裁判例①

自転車同士が丁字路交差点で衝突した事故の裁判例です。

丁字路交差点で自転車同士が衝突した事故

裁判例②

丁字路交差点で左折自転車と直進自転車が衝突した事故の裁判例です。

左折自転車と直進自転車が出会頭に衝突した事故

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、通院慰謝料180万円、後遺障害慰謝料400万円を含む1057万2765円の損害を認め、40%の過失相殺をした後の金額を634万3659円としました。

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