高齢者の自転車事故で問題になることは?

弁護士 髙橋裕也

執筆者:西宮原法律事務所

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高齢者の自転車事故

高齢者が自転車事故に遭うと、重大な怪我を負ってしまうことも少なくありません。

参考:大阪府警

高齢者の自転車事故には、怪我についてもともとの怪我や病気を理由に賠償金の減額を主張されたり、過失割合で高齢者であることを理由に修正されことがあるといった特殊性があります。

こうした高齢者の自転車事故について、損賠賠償請求をするために特に注意することを解説していきます。

このページで解決するお悩み

  1. 高齢者の自転車事故で通院中に気をつけることがわかる
  2. 高齢者が自転車の交通事故で損害賠償請求をするときの注意点がわかる
  3. 高齢者の自転車事故の過失割合がわかる

警察への通報

自転車の交通事故で怪我をしたのに、「相手が重い罪になったらかわいそう」と考えてしまい、事故のことを警察に申告しなかったり、物損事故にしてしまうケースがあります。

自転車事故を警察に通報しないと、事故が起きたことを証明できなくなってしまう危険があります。

また、怪我をしたのに物損事故にしてしまうと、刑事記録で事故状況を証明することができなくなり、過失割合が争いになったときに不利になる可能性もあります。

高齢者の事故でみられる傾向なので、きちんと警察に通報して人身事故にするようにしましょう。

また、警察での事情聴取や実況見分では、なかなか説明が難しいかもしれませんが、きちんと記憶のとおり説明することを心がけましょう。

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通院による治療

自転車事故で怪我をしたときに、怪我についてきちんと賠償を受けるためには、病院で適切な治療を受けることが必要になります。

通院を続けるのが大変だからといって、途中で通院をやめてしまうと、後遺障害が認められにくくなってしまったり、慰謝料が減額されてしまったりする可能性があります。

ご高齢の被害者で、治療を途中で中断してしまい、保険会社との交渉で苦労するというケースを何度か経験しています。

自転車事故で怪我をしたときは、すぐに病院で診察を受け、医師の指示に従いきちんと通院治療を続けることが重要です。

医師から入院を指示されたり、手術を勧められたときも、不安なお気持ちはよくわかりますが、治療の専門家の意見は尊重した方がよいと思います。

また、日ごろから通院している内科等を受診して済ますのではなく、きちんと整形外科等を受診して治療を受けましょう。

内科等では後遺障害診断書を作成してもらうことができず、損害賠償請求で不利になってしまう可能性があります。

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事故前からの怪我や病気

自転車事故の前から、加齢による体の変化や、骨粗鬆症などがあり、それが事故による怪我や後遺障害に影響していていると考えられるときは、「素因減額」として賠償金が減額されてしまうか問題になります。

例えば、自転車事故の前からヘルニアや圧迫骨折があったり、骨粗鬆症で治療を受けていた場合など、「加害者が全ての損害を賠償する必要があるのか?」が問題になるのです。

どのような事情があったときに減額されてしまうかについては、具体的な事情ごとに個別に判断されています。

例えば、大腿骨の骨折の事案で、年相応の骨密度の低下について減額を認めなかった裁判例があります。

また、衝突の衝撃が激しい事故であれば、「骨粗鬆症でなくても骨折していたといえる」という反論が考えられます。

保険会社から素因減額を主張されたときは、弁護士に依頼することをお勧めします。

家事労働の収入

自転車の交通事故で怪我をして仕事が出来なくなると休業損害を請求できます。

また、怪我により後遺障害が認められたときには、仕事をする能力が低下したとして逸失利益を請求することができます。

これは、被害者が家事労働を行っていた場合でも請求することができるものです。

高齢者の家事労働については、「他人のために家事労働をしているか」「家事労働の金銭的な評価」が問題になります。

家事労働については全年齢平均の平均賃金に基づいて算定するのが一般的ですが、高齢者については家事労働の負担が少ないという理由で、年齢別の平均賃金(全年齢平均よりも低額)で計算されることが少なくありません。

しかし、高齢者であっても、共働きの息子夫婦のために家事労働を行っている場合など、家事労働の負担が大きいケースもありますので、具体的な事情を踏まえた主張を行っていくことが重要となります。

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過失割合の修正

自転車と歩行者の事故、自転車同士の事故では、被害者にも過失があるとして過失割合が問題になることもあります。

自転車と歩行者の事故であれば、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」で基本過失割合と修正要素が示されています。

自転車同士の事故であれば、「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」にある考え方を参考に過失割合を検討することになります。

どちらでも、高齢者(65歳以上)については「高齢者修正」が行われ、高齢者に有利なように10%の修正を行うものとされています。

これは、弱者保護の観点から、高齢者に対して保護を与えるという趣旨で過失割合が修正されるものです。

そのため、自転車同士の事故で加害者が高齢者であっても、高齢者であることを理由に加害者の過失割合が有利に修正されることはないとされています。

自転車同士の事故で、双方が高齢者の場合、保険会社が「双方が高齢者なので高齢者修正は不要である」と主張することがありますが、これは誤った理解なので注意が必要です。

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加害者の無保険

自転車事故では自賠責保険がないため、加害者が自転車保険に加入しているかが重要な意味を持ちます。

最近は、条例で自転車保険の加入義務化が進められていることもあり、多くのケースで加害者が自転車保険に加入しています。

しかし、高齢者は自転車保険への加入を検討する機会が少なく、自転車保険に加入していないことが少なくない印象です。

また、高齢者で仕事をしていないと、給料を差し押さえることもできないため、賠償金の支払いを求めることが難しいこともあります。

高齢者が乗る自転車同士の事故については、保険の有無や、賠償金を支払うお金があるかを意識する必要があるのです。

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被害者の無保険

被害者についても、加害者と同様に高齢者が無保険であることが少なくない印象です。

被害者にも過失がある事故では、加害者の怪我について損害賠償を行う必要がありますので、被害者の手元に残るお金が減ってしまう可能性があります。

自転車同士の事故の場合、加害者の保険だけでなく、ご自身の保険についても速やかに調べることが重要といえます。

まとめ

自転車事故で高齢者が被害者になったときは、高齢者であることを理由に有利に扱われることもあれば、不利に扱われることもあります。

素因減額や過失相殺などが争いになると、数%の違いで賠償金額が大きく変わってしまいます。

高齢者の自転車事故については、自転車事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

西宮原法律事務所の
顧問医のご紹介

顧問医師

顧問医師
濱口 裕之/はまぐち ひろゆき

西宮原法律事務所の顧問医師を務めている濱口裕之です。交通事故被害者の皆様にお伝えしたいことがあります。後遺障害認定においては、主治医が作成する後遺障害診断書や画像検査、各種検査がとても重要です。しかし、多忙な主治医の中には、後遺症を正確に反映した診断書の作成や、後遺障害を証明するために必要な画像検査や各種検査を積極的に提案してくれないケースも珍しくありません。

私が代表を務めているメディカルコンサルティング合同会社は、西宮原法律事務所から依頼を受けた交通事故被害者の方々を、交通事故に詳しい各科の専門医が作成する画像鑑定や医師意見書などでバックアップしています。

私たちは、西宮原法律事務所と連携して、多くの案件で交通事故被害者の後遺障害を証明してきました。このページをご覧になっている交通事故の被害者の方々が、適正な損害賠償を受けられるように、私たちが全力でサポートいたします。安心して西宮原法律事務所にご相談ください。

資格および所属 メディカルコンサルティング合同会社 代表医師 兼 CEO
医学博士
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会脊椎脊髄病医
日本リウマチ学会専門医
日本リハビリテーション医学会認定臨床医
弁護士 髙橋裕也

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2007年に弁護士登録後、大阪の法律事務所で交通事故事件を中心とした弁護士業務を行う。
弁護士として15年以上の経験があり、自転車事故の損害賠償事件を多く扱うとともに、自転車事故の専門サイトを立ち上げ、自転車事故の被害者に向けた情報を発信している。
大阪弁護士会の「分野別登録弁護士名簿」に「交通事故分野」で登録しており、大阪弁護士会のホームページに実務経験として自転車事故の解決実績を掲載している。

弁護士(大阪弁護士会所属 登録番号35297)

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