歩道上で対向する自転車のハンドルが歩行者の腕に接触した事故
事案
歩道上で、正面から走行してくる自転車のハンドルが歩行者の腕に接触したという、自転車と歩行者の交通事故です。
以下の事情が考慮されていますので、類似する事故の過失割合でお悩みの方は参考にしてください。
- 歩道上の事故
- 歩行者と自転車がすれ違う際の事故
- 歩行者の回避措置
過失割合
歩行者0% 対 自転車100%
裁判所の判断
裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。
解説
概要
自転車が歩道を通行するときは、歩道の中央から車道寄りを走行する義務があるところ、それに違反したことが重視されています。
保険会社は自転車の走行位置について重視せずに歩行者の過失を主張することがありますので、保険会社との交渉で過失割合について争いになっているときは注意が必要です。
歩行者にもふらつくなどの危険な動きはなかったため、過失相殺を行わないと判断されたものです。
基本過失割合
自転車と歩行者の事故の過失割合については、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」で基本過失割合と修正要素が示されています。
自転車と歩行者の歩道上の事故の基本過失割合は、歩行者0%対自転車100%とされています。
歩道の通行について
自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。
自転車が歩道を通行できるときでも、道路交通法63条の4第2項で決められた、歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。
道路交通法第63条の4
2 前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。
引用元:道路交通法第63条の4 e-Gov法令検索
本件では、そうした自転車が歩道を通行する際の義務に違反しているとして、自転車の過失を重いとみる判断が行われています。
自転車の歩道の通行については⇒自転車は歩道を通行できるのか?。
歩行者の歩道への進入について
歩行者が歩道へ進入し、歩道を直進する自転車と衝突した事故については、基本過失割合が0対100とされています。
歩道は歩行者が優先とされているため、歩道に進入したというだけで過失として評価されることはありません。
自転車と歩行者の事故の過失割合については⇒自転車と歩行者の過失割合は?
ただし、歩行者に急な飛び出し等の特別の事情があれば、自転車にとって歩行者との回避が困難になりますし、歩行者にも過失割合が認められることがあります。
本件では、歩行者はふらつくなどしておらず、回避のために歩道の端に移動するなどしているため、歩行者には過失がないと判断されました。
- 自転車には、歩道の中央から車道寄りを徐行し、安全に進行すべき注意義務を怠った過失が認められた
- 歩行者も自転車の動きを注視する義務はあるが、ふらつくなどせず、回避措置もとっていることから過失は認められないとした
類似の裁判例
裁判例①
歩行者が自宅門から歩道に出たところ、坂道を下る自転車に衝突された事故の裁判例です。
歩行者が歩道へ進入した際の事故として参考になります。
⇒歩道において自宅門から出た歩行者に、坂道を下る自転車が衝突した事故
裁判例②
歩行者が店舗から歩道に出たところ、自転車に衝突された事故の裁判例です。
歩行者が歩道へ進入した際の事故として共通点があります。
裁判例③
路地から歩道に進入した歩行者と、歩道を走行していた自転車が衝突した事故の裁判例です。
歩行者が歩道へ進入した際の事故の過失割合として参考になります。
裁判所が認めた慰謝料と損害額
裁判所は、通院慰謝料4万4000円を含む4万8400円を損害として認め、過失相殺を行わずに請求を認めました。
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