自転車同士の追い抜きの際の接触事故

東京地裁平成27年3月15日判決(交通事故民事裁判例集44巻2号)

事案

自転車が直進していたところ、後方から走行してきた自転車が横に並び、両車が接触して転倒したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されています。

  • 自転車の追い抜きの際の事故
  • 前方自転車のふらつきによる接触
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車45%対自転車55%

自転車45% 対 自転車55%

裁判所の判断

裁判所は、事故の原因(後方車の転倒の原因)、過失割合について以下のとおり判断しました。

「原告自転車は走行中の被告自転車の左側にごく接近して並びその直後原告自転車が転倒したこと、原告自転車の損傷箇所によれば原告自転車は左側を下にして倒れたと認められること、原告自転車が転倒する原因として被告自転車との接触以外には想定しにくいこと、そして、被告自身が実況見分時には原告自転車と接触したと指示説明していたことを総合すると、原告自転車は被告自転車と接触して転倒したと認められる。接触を否定する被告の供述等は、信用することができない。」

「原告自転車は本件交差点内で左方向に進路変更する理由がないこと、被告は飲酒した後であって運転する自転車がわずかにふらついた可能性があること、被告は原告自転車との接触を否定するなど供述は信用できないこと、被告は責任を認める旨を記載した念書に署名押印して原告に交付していること等の事情を総合すると、原告自転車が被告自転車の左側にごく接近して並んだ時、被告自転車がわずかにふらついて左側に傾き、あるいは進行方向が若干左に向いて、原告自転車に接触したものと認めるのが相当である。」

「以上によれば、被告は安全な運転を怠り、被告自転車をふらつかせ、あるいは進路を左方向にした過失によって、原告自転車と接触したと認められるから、民法709条に基づいて原告に生じた損害を賠償すべき責任がある。」

「もっとも、原告は、前方を被告自転車が走行していたのであるから、この後方を走行するか、あるいは追い越す場合でも十分に安全を確認して行うべきであったのに、被告自転車の左側を通り抜けてこれを追い越そうとし、しかも、被告自転車の左側にごく接近して並走するという危険な走行をし、これが本件事故発生の原因となったことも認められる。双方の過失の内容、程度を考慮すると、過失割合は、原告45、被告55とするのが相当と認める。」

裁判所は、前方自転車の運転者が飲酒していたことや、その供述が信用できないことなどから、前方自転車がふらついて後方自転車と接触したものと認定し、後方自転車の運転者が十分に安全確認をせずに追い越そうとしたことも踏まえ、過失割合を前方自転車55、後方自転車45と判断したものです。

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解説

同じ方向に進む自転車同士が衝突した事故では、自転車同士の追抜きの際の事故とみるか、前方自転車が進路変更した事故とみるかで、過失割合が大きく異なることになります。

自転車同士の追抜きの際の事故であれば、基本的には追抜き自転車(後ろから走行してきた自転車)の過失を大きいとみて、修正要素で修正していくという考え方になります。

前方自転車が進路変更した事故であれば、基本的には前方自転車の過失を大きいとみて、修正要素で修正していくという考え方になります。

こうした同一方向に進む自転車同士の事故の過失割合については、自転車同士の事故の過失割合で詳しく解説しています。

本件では、先行自転車の運転者が飲酒をしていたことや、ふらついたり、進路を変更したとみることができることができることから、先行自転車の側の過失を大きいものと評価したと考えられます

また、自転車の飲酒運転については、飲酒していたことによりふらついた可能性があるという書き方をしていますが、自転車の飲酒運転を過失を大きいとみる事情としています

自転車の飲酒運転については、自転車の飲酒運転は許されるか?で解説しています。

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