歩道上で自転車が歩行者に正面から衝突した事故の事例

大阪地裁平成19年7月10日判決(交通事故民事裁判例集40巻4号)

事案

歩道上歩行者自転車正面から衝突し、歩行者が転倒し死亡したという、自転車と歩行者の交通事故です。

以下の事情が考慮されており参考になる事例です。

  • 自転車の歩道通行
  • 自転車の無灯火での走行
自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者0%対自転車100%

歩行者0% 対 自転車100%

裁判所の判断

裁判所は、自転車運転者の過失、過失相殺について以下のとおり判断しました。

「本件事故は、被告Y1が、本件歩道上を被告自転車で走行するに際し、歩行者等の動静に十分注意を払いつつ進行し、かつ、本件事故当時は、既に日没後であったのであるから、前照灯を点灯して自車の接近を歩行者等に知らせるべき注意義務があったにもかかわらず、本件歩道が街灯等によりやや明るい状態であったことや、同歩道上を通行する者がほとんどいなかったことに気を許し、前照灯を点灯しないまま、速めの速度で進行した上、東側の交差点の信号機に気を取られ、前方の注視を怠った過失によって発生したものであることは明らかである。しかも、前記のとおり、被告Y1の視力は、裸眼で0.2程度であったにも関わらず、本件事故当時、眼鏡をかけていなかったというのであるから、このことも相まって、前方の確認が十分でなかったものといわざるを得ない。
他方、前記(1)認定のとおり、本件歩道には、自転車歩道通行可の標識が設置されていたのであるから、Aにおいても、前方を確認しつつ歩行すべきであったということはできるものの、本件歩道は、その幅員が二・五メートルと比較的狭い上、Aは、本件歩道の北端線に近い部分を歩行していたというのであるから、このことと、被告自転車の前照灯が点灯されておらず、かつ、被告自転車が速めの速度で進行していたことを併せ考えると、Aにおいて前方の確認が不十分であったことを同人の過失としてみても、前記認定の被告Y1の加害行為及び過失の程度と対比してみるときには、Aに過失相殺の対象としなければならない程度の過失があったとは認め難いものといわなければならない。」
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解説

概要

裁判所は、歩行者側にも前方確認が不十分であった過失はあるとしながら、自転車側が無灯火であったり、視力が0.2程度しかないのに眼鏡をかけていなかったなど過失が重いことから、過失相殺をすべきほどの過失ではないと判断したものです。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

歩道内の安全を確認せず速めの速度で走行したことが過失と評価されています。

⇒自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

無灯火について

自転車も夜間にライトをつける法律上の義務があります。

夜間にライトをつけるのは発見されやすくするためであり、無灯火での走行は大変に危険なものです。

被告が無灯火で走行していたことを過失として評価しています。

⇒自転車の無灯火については自転車が夜間にライトをつけることは法律上の義務か?で解説しています。

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