Y字交差点において自転車同士が衝突した事故

東京地裁平成6年10月18日(交通事故民事裁判例集27巻5号)

事案

Y字交差点において左折自転車右折自転車出合い頭に衝突したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されていますので、参考にしてください。

  • 自転車の道路の右側走行
  • 「止まれ」と書かれた看板による停止義務
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車25%対自転車75%

自転車25% 対 自転車75%

裁判所の判断

裁判所は、過失割合について以下のとおり判断しました。

「本件事故は、原告が交差点の手前で減速して本件交差点に進入し、曲がり切つた後ペダルを踏み込んだ時に原告自転車の前輪が被告自転車の前輪右側に衝突し、その結果、原告が前かがみで被告自転車の前輪を覆うようにして倒れた結果生じたものであると認めるのが相当である。なお、本件事故時の被告の行動は、大袋駅からの道路の右側を減速しながら通行し、原告を発見して直ちにブレーキをかけ、被告自転車が停止した途端に原告自転車と衝突したものであると認めるのが相当である。」
「そうすると、本件事故は、被告が大袋駅からの道路を通行するに当たり、左側を走行すべきところを右側を走行し、本件交差点も右側から進入したことのため、原告自転車との衝突を招来したものであつて、被告の右義務違反による過失責任は免れない。」
「原告も、直線道路に進入するに当たり、「止まれ」と大きく書かれた看板にもかかわらず、減速をしたのみで本件交差点に進入し、その後、前方の道路事情の確認を不十分のままペダルを踏み込んだものと言わざるを得ず、このような停止義務違反、前方注視義務違反も本件事故の原因となつていることは明らかである。」
「被告の過失と原告の過失の双方を対比して勘案し、また、前認定の本件交差点付近の自転車や歩行者の通行状況も斟酌すると、被告は明示で主張はしていないが、本件事故で原告の被つた損害については、その75パーセントを過失相殺によつて減ずるのが相当である。」
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解説

概要

Y字交差点で「止まれ」の看板があるのに一時停止せず、交差点を曲がり切った後にさらにペダルを踏みこんだという事情が重視され、大きな過失が認められています。

左端走行義務について

自転車は道路の左側端を走行する義務があります。

道路の右側を走行していたことが過失として評価されています。

⇒自転車の車道の走行については自転車が道路を通行するときのルールは?で解説しています。

自転車の一時停止について

自転車も一時停止の指定のある交差点では一時停止をする義務があります。

また、道路交通法上の一時停止の義務がない交差点であっても、一時停止の看板やペイントがあることが、過失割合において考慮されることがあります。

本件でも「止まれ」と大きく書かれた看板があることが考慮されています。

⇒自転車の一時停止については自転車も交差点で一時停止の必要があるの?で解説しています。

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裁判所は、傷害慰謝料150万円、後遺障害慰謝料750万円を含む2865万1582円を損害として認め、過失相殺後の金額を719万4595円としました。