丁字路交差点で自転車同士が衝突した事故

名古屋地方裁判所平成29年11月1日判決(ウエストロー)

事案

丁字路交差点において、交差点へ右折侵入した自転車と、広路を直進進入した自転車が衝突したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されています。

  • 丁字路交差点の自転車同士の事故
  • 直進自転車と右折自転車
  • 被害者が高齢
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車35%対自転車65%

自転車35% 対 自転車65%

裁判所の判断

裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

「被告には、前方を十分に注視すべき注意義務に違反した過失があるというべきであるから、被告は、原告に対し、民法709条に基づき、本件事故と相当因果関係のある原告の損害について、賠償する責任を負う。」

「他方、原告にも、左右の確認を十分にせずに本件交差点に進入した過失があるというべきであるから、本件事故は、双方の過失が競合して発生したものというべきである。

「そして、上記事故態様に加え、上記認定事実によれば、被告が走行していた直線路の方が、原告車両が走行していた突き当たり路よりも明らかに広いといえることも考慮すると、原告が本件事故当時72歳であり、高齢であったといえることを勘案しても、原告の過失の方が大きいというべきであり、その過失割合は、原告:被告=65:35とするのが相当である。」

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解説

概要

丁字路交差点の直進自転車と右折自転車の事故なので、右折自転車の過失の方が重いとみられます。

本件では直進側の道路が明らかに広く優先関係があることも考慮されています。

右折自転車の運転者が高齢者であることを考慮していますが、それでも65%の過失割合が認められています。

基本過失割合

自転車同士の丁字路の事故

自転車事故の過失割合は「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」(赤本下巻 日弁連交通事故相談センター )というものを参考にし、過失割合について検討していくことが考えられます。

自転車同士の丁字路交差点での事故の基本過失割合は、直進自転車40%対右折自転車60%とされています。

交差点を直進する場合よりも、交差点を右左折する場合の方が、より重い注意義務が課せられるためです。

広路の優先について

交差点を通行するときは、明らかに広い道路を進行してくる自転車が優先とされています(道路交通法36条3項)。

被告が走行していた道路の方が明らかに広いという事情が考慮されています。

⇒交差点の広路の優先については自転車が交差点を通行するときのルールは?で解説しています。

高齢者修正について

被害者が高齢者である場合には、被害者の過失割合を小さくする修正が行われます。

原告が事故当時72歳であったことから、高齢者修正が行われています。

高齢者修正というのは、弱者保護の観点から高齢者に有利な修正を行うという考え方です。

  • 交差点を進入するときには交差点内の安全を確認する義務がある
  • 広路が優先であり、狭路側の過失が重いとみられる
  • 被害者が高齢者であることが考慮され、過失を軽いとする事情になる。

類似の裁判例

裁判例①

丁字路で右折自転車と左折自転車が出会い頭に衝突した事故の裁判例です。

丁字路の事故という点で参考になります。

丁字路において右折自転車と左折自転車が出合い頭に衝突した事故

裁判例②

見通しのよくない交差点で直進自転車と右折自転車が衝突した事故の裁判例です。

直進自転車と右折自転車の衝突事故という点で共通します。

直進自転車と右折自転車が見通しのよくない交差点で衝突した事故

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、傷害慰謝料160万円、後遺障害慰謝料1000万円を含む損害を認め、過失相殺として65%を減額した後の金額を814万5315円としました。