丁字路交差点を横断する歩行者に直進自転車が衝突した事故の事例

東京地裁平成23年7月27日判決(ウエストロー、判例秘書)

事案

丁字路交差点において、道路を横断していた歩行者直進する自転車が衝突したという、自転車と歩行者の交通事故です。

以下の事情が考慮されており参考になる事例です。

  • 交差点を横断する歩行者
  • 直進自転車と歩行者の衝突
自転車と歩行者(歩道上)の裁判例
自転車と歩行者(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は歩行者15%対自転車85%

歩行者15%  対 自転車85%

裁判所の判断

裁判所は、自転車と歩行者の過失割合について以下のとおり判断しました。

「本件事故発生場所の状況及び本件事故の発生状況によれば、本件事故は、主として被告の過失、すなわち進路前方の歩行者との衝突を回避するため適宜減速徐行等をして進行すべき注意義務の懈怠によって発生したものといえる。しかし、その際、Bにも安全確認をした上道路を横断すべき注意義務の懈怠があったといえ、これが本件事故発生の一因となったことは否定できない。
そして、本件事故は、信号機による交通整理が行われておらず直近にも横断歩道が設けられていない丁字路交差点において、直線路を進行していた自転車と突き当たり路へ向かい直線路を横断していた歩行者とが車道上で衝突したというものであることを前提として、本件事故は日没後に発生したが、当時周囲はなお明るかったこと、Bは当時72歳であったこと、被告は特段減速徐行等をしなかったが、おおむね制限速度で進行していたことその他本件事故に関する一切の事情を総合的に考慮すれば、Bの過失相殺率は15%と認めるのが相当である。」
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解説

概要

丁字路交差点における、道路横断歩行者と直進自転車の事故です。

事故発生の主な原因は自転車側にあるとしましたが、歩行者にも安全確認義務違反などが認められるとして15%の過失を認めたものです。

事故現場の明るさ、被害者の年齢、自転車の速度なども考慮されています。

前方確認義務について

自転車の運転者は「他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」とされており、安全運転義務が課せられています(道路交通法70条)。

自転車の前方を注視しながら走行する義務は、こうした安全運転義務を根拠とするものです。

原告も、歩行者の動静に十分に注意して走行していなかった過失があるとされました。

自転車の速度について

自転車の一般的な速度は時速約15㎞とされ、自転車が徐行する速度(直ちに停止できるような速度)は時速6~8㎞と考えれています。

本件ではおおむね制限速度で走行していたとして速度を大きく考慮していません。

⇒自転車の速度については自転車事故で問題となる自転車の速度は?で解説しています。

歩行者の道路横断について

歩行者も車道を横断するときは車道内の安全を十分に確認する必要があります。

本件でも安全確認が不十分だったとして過失相殺が行われています。

⇒歩行者の道路横断については歩行者が道路を横断するときに守らないといけないことで解説しています。

高齢者修正について

被害者が高齢者である場合には、被害者の過失割合を小さくする修正が行われます。

原告が事故当時72歳であったことから、高齢者修正が行われています。

  • 丁字路交差点を直進していた自転車には、前方を横断する歩行者との衝突を回避するための注意義務が認められる
  • 歩行者にも安全を確認した上で横断すべき義務がある

類似の裁判例

裁判例①

交差点手前の事故で、道路横断歩行者と直進自転車が衝突した事故の裁判例です。

交差点手前で道路を横断する歩行者に、交差点を直進する自転車が衝突した事故