横断歩道へ進行する自転車に、時速約20㎞で疾走する自転車が衝突した事故の事例

横浜地裁平成23年12月26日判決(自保ジャーナル1874号)

事案

横断歩道に接続する部分の歩道から横断歩道を渡ろうと進行した自転車の右側方に、時速約20㎞で疾走する自転車が衝突したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されており参考になる事例です。

  • 自転車の歩道での高速度走行
  • 止まれの標識による注意喚起があった
  • 自転車が自転車横断帯ではなく歩道を横断した
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車10%対自転車90%

自転車10% 対 自転車90%

裁判所の判断

裁判所は過失割合について以下のとおり判断しました。

「被告は、被告自転車のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。また、道路標識などにより通行できるとされている歩道を通行する場合、徐行しなければならない。しかし、被告は自転車通行帯が途切れた地点で停止あるいは徐行せず、時速約20キロメートルで走行を続けて原告自転車に衝突した以上、主として被告の過失により本件事故が発生したものと判断される。そして、自転車としては高速での走行が、原告花子の受傷という結果の発生に重大な影響を与えている。

また、本件事故は横断歩道に接続する歩道で発生しており、このような場所は一般的に、信号待ちのため停止している歩行者や、横断歩道を渡りきった歩行者が多数存在する場所であり、走行中の自転車の側はより注意を喚起するべきである。しかも、現場の直前には自転車に対し「とまれ」という標識まで存在したのであり、かかる標識が道路交通法上のものではないとしても、走行中の自転車運転車に対し注意喚起を促していたといえる。

他方、原告自転車も徐行していたとはいえ停止していたわけではないから、回避可能性の全くない追突事故等と同視することはできない。また、原告花子の転倒地点等からして、少なくとも横断歩道を渡り始めようとした地点は、自転車横断帯ではなく横断歩道のほぼ中央であり、原告自転車が進行して来る方向により近かったものと認められる。

したがって、同原告の過失割合を1割とするのが相当である。」

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解説

概要

歩道から横断歩道へ進行した自転車と、歩道を高速度で進行してきた自転車が衝突した事故です。

自転車の速度や、特に安全を注視すべき状況であったことを理由に過失が大きいと判断しています。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

自転車が歩道を通行するときでも、自転車は歩行者の優先、徐行義務、走行位置など、厳しいルールを守らなければなりません。

被告が徐行せず時速約20㎞で走行し続けたことを過失としています。

⇒自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

自転車の一時停止について

自転車も一時停止の指定のある交差点では一時停止をする義務があります。

被告側には道路交通法上の標識ではないものの「とまれ」の標識があったことから、より注意しながら進行すべきであったとされています。

⇒自転車の一時停止については自転車も交差点で一時停止の必要があるの?で解説しています。

類似の裁判例

裁判例①

自転車が歩道内で前進して前方を通過しようとした自転車と衝突した事故の裁判例です。

歩道上で信号待ちの自転車が、歩道内で前進し前方通過自転車と衝突した事故