歩道上で同一方向へ進行する自転車同士が接触した事故

東京地裁平成21年6月17日判決(交通事故民事裁判例集42巻3号)

事案

歩道上を進行する自転車が、左折するため左へ進路変更をしたところ、左後方を走行していた自転車と接触したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されているので、類似の事故で参考にしてください。

  • 自転車が通行を許されていない歩道での自転車同士の事故
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車30%対自転車70%

自転車30% 対 自転車70%

裁判所の判断

裁判所は、過失割合について以下のとおり判断しました。

「被告は、本件交差点を左折進行するに当たり,周囲の交通の安全に注意すべき義務があるのに、これを怠った過失により、本件事故を発生させたと認められるから、原告に対し、民法709条に基づく損害賠償責任を負う。」

「被告には、本件事故の発生について前記2のとおりの過失があるが、他方、前記1で認定した事実によれば、原告も、自転車による通行が許されておらず、歩行者の通行が少なくない歩道を自転車で走行している上、周囲の交通の状況に対する不注視があったといえるから、過失相殺を施すべきところ、上記の諸点に照らせば、本件事故における過失割合は、原告30パーセント、被告70パーセントとするのが相当である。」

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解説

概要

自転車が左折進行する際の後方の安全確認義務違反を重くみていますが、後続車にも自転車通行不可の歩道を通行していた過失などがあるとして30%の過失相殺を行ったものです。

後方確認義務について

自転車は後続車の速度や方向を急に変更させるおそれがあるような進路変更はしてはならないとされています(道路交通法26条の2第2項)。

つまり、そのようなおそれがある進路変更をすることのないよう、後方を十分に確認する義務もあります。

被告は交差点を左折進行する際に後方確認が不十分であったとされました。

⇒自転車の後方確認義務については自転車が後続車との関係で注意すべきことは?で解説しています。

歩道の通行について

自転車は原則として歩道を通行することはできませんが、歩道通行可と指定された歩道であれば通行することができます。

本件の歩道は自転車の通行可ではないため、周囲の交通に対する不注視の過失があったとされました。

⇒自転車の歩道通行については自転車は歩道を通行できるのか?で解説しています。

  • 前方の自転車が交差点を後方の安全確認を十分にせずに左折したことを大きな過失とした
  • 後方の自転車についても、自転車通行禁止の歩道を通行していたことなどを過失と評価した

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裁判所は、通院慰謝料19万円を含む21万1124円を損害として認め、過失相殺後の金額を14万7786円としました。