歩道上の自転車同士の非接触事故

東京地裁平成20年7月8日判決(自保ジャーナル1761号)

事案

歩道上を走行していた自転車が、対向自転車との接触を避けようとしてハンドルを切ったところ、雨で路面が濡れていたこともあり転倒したという、自転車同士の交通事故です。

以下の事情が考慮されているので、類似の事故で参考にしてください。

  • 自転車が横断歩道付近を斜行して歩道に進入
  • 自転車が相手自転車と接触することなく転倒
自転車同士(歩道上)の裁判例
自転車同士(車道上)の裁判例

過失割合

過失割合は自転車30%対自転車70%

自転車30% 対 自転車70%

裁判所の判断

裁判所は、以下のとおり判断して、加害自転車の責任を認めるとともに、被害自転車についても過失相殺を行いました。

「被告は,本件道路の車道から西側歩道内に被告車を乗り入れるに際しては,前方左右の状況に注意してできる限り安全な速度と方法で進行しなければならない義務があったにもかかわらず,自車の右前方を進行中の原告車を特段気にすることなく,横断歩道付近を斜行して歩道内に入り込み,原告車のすぐ近くを通り過ぎたことにより,年配の女性である原告が衝突の危険を感じ,衝突を回避するために原告車のハンドルを左に切ることを余儀なくさせ,雨で路面が濡れていたことも影響して転倒に至らしめたもので,被告には本件事故を惹起した過失がある。
他方,原告にも,本件道路の西側歩道内を自転車で進行するに当たっては,前方から走行してくる自転車等の状況に応じて,適切なハンドル操作等の措置を講ずることが可能であったと考えられるのに,それができずに転倒したことについて,本件事故当時の原告の年齢や事故当時の現場の状況を考慮しても,過失があるというべきである。
そして,上記認定の双方の過失の態様に照らせば,本件事故発生について原告の過失割合は3割,被告の過失割合は7割であると認められ,原告の後記損害については,上記過失割合に従って過失相殺をするのが相当である。」
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解説

概要

自転車同士の事故ですが、両車が接触していないため、加害自転車の責任が争点となりました。

加害自転車は被害自転車と接触していないものの、歩道内に進入する際に安全な速度、方法で進行する義務を怠り、被害自転車がハンドルを左に切ることを余儀なくさせ、転倒に至らしめたことから、過失があると判断したものです。

安全義務について

自転車の運転者は「他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」とされており、安全運転義務が課せられています(道路交通法70条)。

車道から歩道に乗り入れるにあたり危険を生じさせたものとされました。

  • 非接触事故ではあるが、被害者に衝突の危険を感じさせ、ハンドルを左に切ることを余儀なくさせ、転倒させたことを過失とした

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裁判例①

自転車が車道から歩道に進入し、歩道の自転車と衝突した事故の裁判例です。

車道から歩道に進行した自転車と、横断歩道横断直後の自転車が衝突した事故

裁判所が認めた慰謝料と損害額

裁判所は、入通院慰謝料210万円、後遺障害慰謝料420万円を含む1434万2867円を損害として認め、過失相殺後の金額を1004万0006円としました。